2016年08月15日

「償いの心」が原点

8月14日付、琉球新報は沖縄予算の概算要求「リンク論」について特集記事を掲載している。沖縄関係予算について復帰時に特殊事情に配慮して立法された「沖縄振興特措法」と一括計上の仕組みについて分かりやすく解説している。沖縄関係予算の成り立ちや一括計上を理解する上で大変参考になる記事である。

「基地と振興」のリンク論を日本政府は認めたが、沖縄振興の原点は風化している。沖縄振興についての私のコメントが掲載されているので、ブログで紹介する。

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2016年8月14日付、琉球新報「識者評論」
「償いの心」が原点
   宮田 裕 (元沖縄総合事務局調整官)

沖縄を取り巻く環境が大きく変わり始め、沖縄振興の原点「償いの心」が瓦解している。菅義偉官房長官は、基地と振興はリンクすると語り、鶴保庸介沖縄担当相は「消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいよでは、血税を無駄遣いしているという批判に耐えられない」と予算の減額を示唆した。島尻安伊子前沖縄担当相の参議院選落選が影響した方針転換だと伝えられている。

国の言いなりにならない露骨な兵糧攻めは、とんでもない浅薄(せんぱく)な歴史理解と言わざるを得ない。米軍政下で日本の財政政援助から見捨てられ、沖縄苦難の歴史に「償いの心」を持ち、国の責任で振興を進めるというのが、本土復帰に際する沖縄振興の精神だった。

復帰関連法案の立法趣旨説明で総理府総務長官・山中貞則氏は、苦難の道を歩まれた沖縄県民に謝罪した。1971年3月、政府広報「時の動き」で山中氏は沖縄返還に当たり国の責任で沖縄振興に取り組むと述べた。山中氏は、復帰時に大蔵省(当時)が難色を示していた沖縄の高率補助反対を押し切り、振興予算に高率補助を盛り込んだ。「『沖縄の心』とは苦難な沖縄の歴史に対す『償いの心』だよ」。山中氏が財政当局を口説く言葉だ。贖罪意識で沖縄振興の「原点」を貫いていた。

辺野古新基地建設が浮上すると振興策も変質し、基地と振興策がリンクした形で沖縄予算が決まるようになった。基地を受け入れなければ「兵糧攻め」で沖縄予算を減らすことは沖縄振興の本質を見失うものだ

復帰時に沖縄振興法が制定され、振興計画に基づき財政措置が講じられてきた。基地問題が浮上し、沖縄予算が理不尽にまみれ、振興予算3千億円の攻防を巡り本土と沖縄の認識の相違がある。

沖縄振興は、復帰後の沖縄の将来展望を明らかにし、県民が喜んで復帰を迎えるために実施されるものであるが、原点は風化している。沖縄を理解する政治家は少なくなった。沖縄振興の本質を見つめてほしい。権威だけで沖縄問題は解決しない。(地域開発論)
 
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2016年08月12日

米軍政下の財政援助をめぐる国会論戦(66)

米軍政下の財政援助をめぐる国会論戦(66)
〜1967年特別国会質疑のポイント〜

■問61 老人福祉政策の現状と改善策如何。

老人福祉法(1966年5月1日立法11号)は、ほぼ本土と同様の内容を持っている。沖縄で7月1日を「年よりの日」としていることも本土と同じである。

しかし、立法後日が浅く、各種の施策が本土より遅れている。老人福祉施設としては、わずかに那覇、平良、石垣市に、従来生活保護法による養老施設から養護老人ホームに移し替えされることになった施設があるのみである。

既存の老人ホームは施設の老朽化が著しいので、早急に改築の必要がある。その他、特別養護老人ホーム及び経費老人ホームを計画的に整備する必要がある。

老人健康診断には、沖縄の地理的特殊性にかんがみ、健康診断の項目の中にマラリア、フイラリヤ等の風土病をいれること、予定されている国民健康保険制度の実施を通じ老人医療の向上を図ること、保健所の活動を活発化して老人衛生の向上を図る等の施策を速やかに実行する必要がある。

政府としてはこれら所要の財政援助と技術援助を強力に推進する。

■問62 医療及び公衆衛生の現状について問う。また、どのような方向で充実すべきと考えるか。

沖縄においては、終戦当初から米国民政府が公衆衛生事業に強力な指導を打ち出し、それに応じて琉球政府が実践に努力してきたので、予算の大幅な進展、死亡率の低下、体位の向上、平均寿命の延長等にかなりの成果をあげているが、個別的には本土と比べて、まだ相当遅れている。

1963年の死亡率は人口千人に対し5.3(本土は7.0)で死亡順位は老衰症状及び診断名不明確な状態、神経系及び感覚器の疾患、循環器系の疾患、消化器系疾患の死亡者が多い。

総死亡率は本土より低いが、これは人口構造において若年者の占める割合が多いものと考えられる。
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2016年08月11日

米軍政下の財政援助をめぐる国会論戦(65)

米軍政下の財政援助をめぐる国会論戦(65)
〜1967年特別国会質疑のポイント〜

■問60 身体障害者福祉法(1953年立法81号)は、ほぼ本土法と同様の内容を持っている。

身体障害者6,760人(1964年4月現在)のうち、肢体不自由者は4,196人、聴覚障害者827人、言語機能障害者376人となっている。身体障害者手帳の所持者は2,152人である。

年間の援護の実施状況は、補装具年間約70件、更生医療約15件程度実施している。施設の現況は、失明者、ろうあ者厚生施設(収容人員48人)、肢体不自由者厚生施設(収容人員40人)、身体障害者施設(収容人員6人)である。

日本政府が行ってきた施策を説明する。
沖縄の戦傷者に対する更生医療補装具給付を1947以来行ってきている。肢体不自由児者更生施設及び身体障害者更生相談所の創設に必要な経費について援助を行っている(1964年度1,440万円)。

身体障害者福祉行政事務費研修として、リハビリラーション技術的研修、義肢政策技術研修については毎年技術援助として専門家、研修生の派遣受け入れが行われている。

理学療法、作業療法、義肢製作についての技術援助を継続したい。特に沖縄からの強い要望となっていることにかんがみ、これを一層推進することと、補装具の交付、更生医療の普及のための指導を強化していきたい。
posted by ゆがふ沖縄 at 00:32| 日本政府の復帰対策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする