2012年08月03日

沖縄地域開発の系譜(45)

沖縄地域開発の系譜(45)

沖縄経済振興の基本構想G

 昭和44年10月22日 総理府特別地域連絡局


(9)貿易の振興、物価の安定
 これらの諸施策のほか、祖国復帰前において沖縄経済の振興上配慮されるべきものに、貿易の振興と物価の安定に関する施策がある。

 まず、貿易の振興について、基地依存の経済を是正し、経済の安定化を図るためには、産業の振興と並び輸出の積極的増大、輸入の適正という貿易の振興施策が必要となる。

 輸出については、輸出産業の主力をなす食料品、縫製品などの軽工業製品は、一般に労働集約型業種であるが、最近の労働力不足に伴う賃金の上昇傾向、発展途上国進出の影響等から今後内外の環境は一層厳しくなるものと見られるので、このような情勢に対応し、生産面での合理化を図るとともに商品企画力、市場開拓力の強化、優良外資の導入等による総合的な輸出促進策を講ずる必要がある。

 輸入については、貿易収支が恒常的入超で対外収支尻の動向が直ちに企業活動に影響する沖縄の貿易構造、金融構造にかんがみ、県内供給力の増大を図るとともに良質低廉な財貨の輸入を基本として行う必要がある。


 なお、輸入に関し一部工業製品等について、その保護育成を理由にとられている輸入抑制措置については、その措置の縮小による関係企業、県民生活への影響等を比較衡量し再検討する必要がある。

 また、自由貿易地域については、発展途上国製品との競合、地域内施設の事情などから進出企業の多くは経営に困難をきたしている現状にある。この制度が第2次産業の振興という目的で創設されながらその成果の不十分なる原因を究明するとともに、この制度の復帰後の取り扱いについて、現在高雄その他各地の自由貿易地域の例を参考としてその存続拡大を望む意見もあるので、このような制度を復帰後も設けることの可否につき、その性格、経済効果、社会的影響、税制その他各種制度との関連を考慮し総合的見地から検討を進める必要がある。

 物価の安定については、成長経済下における消費者物価の上昇は、賃金、所得の上昇と産業部門間の生産性の格差、流通部門の立ち遅れなどの要因によるところが大きいが、消費者物価の上昇が過度にわたる時は、県民生活の不安定をもたらすことはもとより、貯蓄意欲の減退等を通じて経済成長自体に悪影響を及ぼすことにもなる。


 したがって経済成長と物価の安定を両立させることは、たとえ困難であってもその努力を惜しんではならない。

 消費者物価の安定のためには、低生産性部門の構造改善対策の推進、流通機構の近代化、合理化、公共料金の適正化、公正な競争条件の整備、消費者行政の推進など経済全般にわたる施策を強力に進めていくとともに、琉球政府の財貨サービス購入がGNPの15%近くに達している状況にかんがみ、同政府施策の運営に当たっては、物価を刺激し経済の成長が過度にわたることのないよう慎重な態度で臨む必要がある。

4 むすび

 以上、本土復帰を目前とした沖縄の経済振興の基本構想について述べたのであるが、冒頭に述べたごとく、現在の沖縄経済はいわゆる基地経済、日米両国の財政援助等によって、その成長が支えられており、特に基地経済の沖縄経済に占める寄与率は三割にも達している状況にかんがみるとき、復帰に伴い沖縄経済に混乱を生じしめることなく、その安定的発展を期するためには、この基本構想に基づく沖縄経済の具体的振興策を樹立するに当たり、沖縄の軍事基地をめぐる高度の政治的論争に左右されることなく、一方においては、冷静に沖縄経済の現実を踏まえた着実な施策を積み上げていくべきであり、経済の激変を割くるためには、日本政府は、長期にわたる外国施政によって生じた沖縄経済の特殊事情に対し深い理解と配慮を払うべきである。

 また他方、長期的には日本経済全体の将来ビジョンの中において、沖縄が果たしうる新たな役割と可能性をあらゆる角度から探求し構想し、これを基礎として具体的な開発施策が策定される必要がある。

 この基本構想に基づく沖縄経済の振興施策を現実のものとするためには、沖縄の復帰後においても、一定期間は、日本政府が沖縄経済振興のための特別措置を講ずることにより、政府資金および民間資金を計画的に投入して思い切った開発事業を実施する必要があり、さらにこれらの施策を総合的に遂行していくためには特別の国家機関の設置についても検討する必要があろう。

 現在、総理府において、沖縄・北方対策庁の設置を企画しているのは、同庁において沖縄の復帰準備対策に併せて、このような施策も掌理されるべきであるという理由に基づくのである。

 沖縄の本土復帰に伴う、沖縄の経済問題を中心とする複雑困難な諸問題を円滑に推進するためには、前述の政府機関の設置に加え、広く民間の英知を結集し、これを政府施策の中に反映せしめるため民間有識者による話し合いの場を持つ必要があろう。

 最近復帰を間近かに迎えんとする沖縄経済界に祖国復帰後における沖縄経済について不安を訴える声が高まっていることは注目に値する。沖縄は戦後25年独自の経済圏を形成してきたのであり、そのような環境の下で近時高度の経済成長を見てきたのである。沖縄の祖国復帰は、沖縄経済が名実ともに日本経済の一環となることであり、沖縄県民にとっては正に大きな変革を意味する。したがって沖縄の祖国復帰を円滑に進めるためにも、また、将来の沖縄県民の福祉のためにも日本政府は沖縄経済振興の具体的施策の策定を通じて、沖縄経済界に存する不安の解消を図るべきである。


 また沖縄経済界自体も、単に安易な現状維持ないし既得権の擁護といった消極的態度に低迷することなく、沖縄の祖国復帰という民族の大事業の達成を現実的課題として直視し、沖縄経済の現にある姿からあるべき姿に脱皮していくための勇気と決断を持ち、琉球政府と協力して沖縄経済振興の方針を探求し、その具体的施策を本土の施策の中に反映せしめるため一段の努力を傾注すべきであろう。





posted by ゆがふ沖縄 at 00:04| 沖縄地域開発の系譜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする