2012年09月06日

琉球政府の復帰施策(25)

琉球政府の復帰施策(25)


■幻の「屋良建議書」(18)

〜沖縄復帰の建議書〜

1971年11月18日


6 労働問題

 復帰を目前にした沖縄では、現在、一般住民の間に諸制度の変革その他によって、復帰の時点からその生産基盤が奪われはしないかとの不安が高まっております。

琉球政府行政主席・屋良朝苗氏.jpg

 このような住民の生活不安を解消するためには、沖縄の復帰に際して国の抜本的な福祉政策、経済政策がなんとしても必要であります。


 沖縄の労働者は戦後米国の軍事支配の下で「無の状態から一歩一歩諸権利を獲得し、それを拡張してきたというのが実情であります。

 復帰に伴う本土法の沖縄への適用については、これらの事情を考慮し、沖縄の県民及び労働者の要望が十分入れられた労働政策が打ち立てられるような特別の配慮が必要であります。特にこの点で留意しなければならないのは、本土地方公務員法の沖縄への適用と、軍関係労働者者の間接雇用制度への移行措置に関する問題についてであります。

 沖縄においても過去に、本土の地方公務員法にほぼ相当する「市町村公務員法」と「地方教育区公務員法」を制定しようとする動きはありました。しかし、これらの法案はいずれも県民に受け入れられず廃案になりました。本土においても公務員の争議行為を一律に禁止している国家q公務員法や、地方公務員法においては再検討すべきであるとの声が高まり、政府も公務員制度審議会を発足せしめて、公務員の労働基本権のあるべき姿を調査、研究させているのが実情であります。

また、最近の本土の裁判所の判例に照らしてみても、単に「公務」に従事しているだけで、公務員の労働基本権を制限、あるいは剥奪している国家公務員法及び地方公務員法については幾多の疑問が投げられていることは周知のとおりであります。したがって本土においてこの問題が十分に調査、研究され最終的な結論が出るまでは本土の地方公務員法の沖縄への適用については慎重に配慮されるよう強く要請するものであります。


 沖縄の軍関係労働者の労働関係は米軍が一方的に公布した布令116号「琉球人被用者に関する労働基準および労働関係法」によって規制されておりますが、復帰により軍関係労働者が間接雇用制度に移行することになり民間労働者と同様、労働三法の適用を受けることになります。

 したがってその限りにおいては大いに前進することになりますが、なお一抹の不安を抱かずにはおられません。沖縄の米軍基地は本土のそれと違い強大な総合的戦略基地であり、極東の情勢いかんによって軍事目的遂行のために、その運用が歪められ、軍労働者の労働基本権が抑圧される懸念があるからであります。

 なお、沖縄の労働関係法(布令116号を含む)には、本土の労働関係法に比べて労働者にとって有利な面もある(解雇手当、産前産後の有給休暇、年休の取扱い等個別的な労働関係)ので、復帰に伴う本土法の沖縄への適用に際しては、その点を考慮し、少なくとも復帰によって労働者の既得権が失われることがないように措置すべきであります。

 次に布令116号の適用にある沖縄の軍関係労働者は、同法によって第1種「米国政府割当資金から支払いを受ける直接被用者」、第2種「米国政府非割当資金から支払いを受ける直接被用者」、第3種「琉球列島米国軍要因の直接被用者」及び第4種「契約履行中の米国政府請負業者の被用者」に分類されていますが、現在沖縄の「軍関係離職者等臨時措置法」の適用範囲にある軍関係労働者は、同法施行のために要する資金の都合により第1種、第2種被用者に限られ、第3種及び第4種被用者は同じ布令116号の適用下にある軍関係労働者でありながら、原則として同法の適用を排除され、同法の恩恵を享受できない状態に放置されております。

このことは、米軍による軍関係労働者の分類が全くその都合によってなされたもので、これらの被用者が第1種、第2種被用者と同様、軍関係労働者として布令116号の適用下に置かれてきた事実並びにその従事している労働の実態に徹してみれば明らかに不合理であるといわねばなりません。


 したがって、復帰に際しての移行措置を実施する場合には、これらの第3種及び第4種被用者の実情も十分に組み入れられ、国の「駐留軍関係離職者等臨時措置法」の中に組み込む等特別の施策を要望するものであります。

 特に第4種被用者の中にはかっては第1種あるいは第2種被用者であったものが、米国のドル防衛策の強化によって第4種に入れられた者が多く、その労働の実態は、第1種、第2種被用者とそれほど異なるものではないことに注目しなければならないと思います。

次に復帰によって転廃業を余儀なくされた煙草製造業者、製塩業者等については、その生活基盤を確保せしめるための特別の措置をするよう要望いたします。

また、復帰を目前に控えてすでに経営不振に陥っているといわれる基地関係業者及びその被用者についても妥当な政策が実施されるよう具体的な措置を要望いたします。


 要するに、復帰に伴う移行措置の実施については、あくまでも沖縄県民の立場に立って、その福祉増進のための施策が必要であります。労働政策においても積極的な施策が講じられ、復帰後の新生沖縄県民が、明るく平和で豊かな希望に満ちた生活が営めるよう特段の施策と配慮を切望するものであります。





posted by ゆがふ沖縄 at 00:03| 琉球政府の復帰施策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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