2011年11月20日

「沖縄の優位性を生かせ」

シリーズ 「沖縄経済の特異性はどうしてつくられたか」−(9)

<「沖縄の優位性を生かせ」>

 沖縄は経済問題を「政治」で語り、要請、陳情行政で問題解決を図ってきた。特別措置、高率補助等で国に依存してきた。自立経済を構築する沖縄振興策は生産・需用創出、新規ビジネスの開拓等、経済の成長戦略となり得ていない。

 沖縄に活力をもたらすのは「ものづくり」・「文化」の産業化である。比較優位としては、未利用植物と有用微生物による発酵技術を組合せたサプリメント開発、海洋資源を利用した自然海塩、ニガリの新分野の産業化、月桃から化粧品開発等が考えられる。醸造副産物(泡盛、蒸留粕、ビール酵母等)の再利用、健康食品など資源活用型新技術開発は有望と思われる。


 音楽・文化の産業化で沖縄が注目されている。沖縄発音楽・映像等の産業化、かりゆしウェアーのデザイン開発等は成長産業になり得る。
 

 健康・長寿・癒しは沖縄の比較優位の分野である。沖縄の特性は長寿・癒しであり、いつでも誰でも体験できる亜熱帯ヘルシーリゾートに特化した健康の産業化は、他域ではまねのできないユニークな分野である。健康長寿県として沖縄の伝統食品、薬草等の健康食品は成長性の高い産業であり、沖縄のポテンシャルはそれに十分こたえられる。


 近年、アジアの食に貢献する沖縄が見直されてきた。中国産野菜の農薬使用で、アジア主要都市は食に対する不信・不安が高まっている。アジアの市場を新たに取り組み、沖縄からシンガポール、香港等アジア市場へ安全・安心な沖縄野菜・食材を供給することはアジアの食に貢献することになる。


 観光・リゾート分野では、東アジアの富裕層をターゲットにすることで沖縄観光の魅力アップが図られる。07年度に沖縄を訪れた観光客は589万人であるが、そのうち外国人観光客のシェアはわずか3%(約19万人)である。アジア市場は潜在需要が高い。09年春に沖縄本島の主要港湾である那覇港には10万トンクラスのクルーズ船バースが暫定供用される。台湾や中国沿岸部に近い地理的特性を生かし、アジアの富裕層をターゲットにした観光戦略で新たな観光需要の換記が期待されている。

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2011年11月19日

「制度設計の不備」

シリーズ 「沖縄経済の特異性はどうしてつくられたか」−(8)

<「制度設計の不備」>


 現在の振興事業費は、公共事業中心の振興策となっている。道路、港湾等の社会インフラは本土並みに達しつつあり改善がみられるが、振興事業費が教育、福祉、医療など県民生活と密接な分野に使えるような制度設計になっていない。


 沖縄振興の切り札として金融特区、IT特区等の経済特区が制度化されたが、経済活性化のトリガーとしての優遇税制はほとんど活用されていない。金融特区は、北部振興策の一環として普天間飛行場の辺野古沖受け入れ条件として制度化されたが、事業認定を受けて立地した企業は1社で機能していない。金融特区のメリットは、法人税から35%の所得控除を行うことで銀行業、証券業、保険業を集積するとしているが企業誘致のインセンティブにはなっていない。


 沖縄の金融特区は欧州のダブリン(アイルランド共和国)をモデルとしている。ダブリンは@政府の積極的な介入、A法人税率10%適用、B産業開発庁による積極的なマーケティング活動、C内閣府と業界団体による効率的な運営仕組みづくり、Dアイルランド中央銀行による迅速な金融機関の許認可等政府主導で取り組んでいる。ファンド会計に習熟した会計士、金融、保険専門家育成の大規模プログラム導入による教育水準の高さ、若い労働力の供給等で外国企業が進出している。高度情報通信ネットワークも整備され、便数の多い国際空港があり成功している。


 沖縄の金融特区は制度設計がお粗末すぎる。その他のIT特区、観光特区についても優遇税制の活用実績に乏しく、産業振興の牽引力とはなっていない。企業の立地促進と貿易の振興を図る目的で設置された特別自由貿易地域、那覇自由貿易地域制度については、関税法の枠内で運用されており、アジア諸国と競争していく制度ではない。


  30年間の復帰プログラムが終わり、新たな「沖縄振興法」策定に当たり、稲嶺知事は「魚より釣り具がほしい」として政府に「経済特区」を認めさせたが、沖縄に与えられた経済特区は「魚が釣れない釣り具」で沖縄振興の牽引力になり得ていない。

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2011年11月18日

「基地とリンクした振興策」

シリーズ 「沖縄経済の特異性はどうしてつくられたか」−(7)


<「基地とリンクした振興策」>


 基地所在市町村の財政は、基地交付金、基地所市町村在活性化事業(島田懇談会事業)、北部振興事業で「箱モノづくり」がなされてきたが、維持・管理等のランニングコストで市町村財政は硬直化し、地域は閉塞感から抜け切れていない。


 基地所在市町村には,年間約280億円の防衛施設生活環境資金(民生安定施設補助)、特定防衛施設交付金、国有提供施設交付金、基地施設所在市町村調整交付金等が交付される。その他、基地受け入れの対価として基地所在市町村活性化事業(島田懇談会事業)1000億円、北部振興事業1000億円が担保された。


 島田懇談会事業は、基地市町村の閉塞感を緩和し、経済を活性化することで若い世代に夢を与える事業として1997年度にスタートしたが、地域は潤っていない。08年度までに837億円が事業採択されたが、「箱モノ」がつくられ、雇用機会の創出、経済の自立、人づくりを目指す事業目的は達成されず、将来の展望は描かれていない。


 北部振興事業は、「普天間飛行場の移設に係る政府方針」として2000年度に特別予算100億円が計上され、新たな基地建設の代償措置としておおむね10年間で1,000億円が担保された。2000年度から2007年度までの北部振興予算の実績は、公共事業442億円、非公共事業252億円、計694億円が事業採択された。北部振興事業は基地とリンクしているため、基地受け入れの条件が付いている。例えば、07年度予算は、V字型の代替海上基地建設を認めない沖縄側に防衛省が反発し、10カ月も予算が凍結され、新規・継続事業がストップし、年が明けた08年1月22日、会計年度がわずか2カ月の期間で予算凍結の解除を行ったが基地とリンクしている地域振興の在り方が問われている。


 基地交付金、基地とリンクした予算で地方自治を行うことは、地域の主体性を失うことになり魅力ある地域づくりはできない。


 基地所在市町村には深刻な財政問題も発生している。基地依存度の高い自治体は嘉手納町40%、次いで宜野座村35%、金武町は35%である。これらの市町村は、基地収入が税収の2倍を超えており、基地収入がないと予算が組めない構造的な問題を抱えている。


 普天間飛行場移設関連経費としては、北部市町村には基地周辺対策費、基地交付金、北部振興事業費、SACO関連経費等3,800億円の財政移転がなされた。移設受け入れ先の名護市は法人事業税収入の減少、起債残高の増加、失業率の増加等がみられる

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