2011年12月28日

私はこう見る〜2012年度沖縄予算

20111228日の沖縄タイムスに私の意見が掲載されました。以下の内容です。
 私はこう見る〜2012年度沖縄予算〜
 沖大地域研究所特別研究員          
 (元沖縄総合事務局調整官)
      宮田 裕


 復帰後の沖縄予算は、経済を活性化する機能は持たなかった。40年間で9兆2千億円の振興事業費が投入され、道路、空港、港湾など社会資本は整備されたが、経済創出効果はほとんど見られない。

 第1次産業に1兆5千億円の予算が投入されたが、3万5千世帯が農業を捨てた。3千ヘクタールの耕地が放棄され、県内総生産のシェアは復帰時の7・5%から1・7%(2008年度)に、第2次産業は22・5%から12%にそれぞれ低下し、モノづくりは衰退した。

 振興予算は県外へ流出し、「ザル経済」を作り出す要因ともなった。国直轄事業は本土ゼネコン優先発注が続き県内で資金循環しない構造がつくられた。

 聖域とされていた沖縄予算は3次振計の後期から大幅に切り込まれるようになった。ピーク時の1998年には4713億円あったが、04年度には2946億円に減り、11年度には2301億円まで落ち込んだ。この間、建設業は598件倒産し、1万1千人が失業した。

 県は新たな沖縄振興の制度として12年度に自由度の高い3千億円の一括交付金を要求した。政府は直前まで厳しい認識を示したが、電光石火のごとく要求額に500億円積み上げて2937億円と決定。そのうち1575億円は自由に使える一括交付金だ。本年度予算に比べて636億円増えた。

 東日本大震災で多額の復興予算を必要とする国難の時代に増税論も噴出している。他府県の予算が厳しく削られている中で沖縄予算は概算要求額に500億円追加された。

 予算査定から見ると、このような査定の在り方は、到底考えられない。概算要求のシステムとしてはありえないことだ。

 沖縄予算が大幅に増加した背景には、「普天間問題」で沖縄の理解を得たいとする政治的思惑が作用したとみるべきだろう。普天間問題の軟化策として基地とリンクさせる政治判断がうかがえる。

 一括交付金について、県と市町村でどのような使い方をするのか? 交付金についての算定基準、配分方法、執行体制などの工程表は見えないままだ。

 制度をこなす行政力も問われる。一括交付金は県が査定し交付することになるが、市町村ごとの財政状況を把握し事業内容、経済合理性、費用対効果などを検証し、偏らない予算配分も求められる。

 予算を査定する「知事」に対し、査定される「市町村長」はおのずと弱い立場に置かれる。市町村間の予算分捕り合戦も予想される。一括交付金化で知事の権限が大幅に強化されることになり、県議会のチェック機能が非常に重要となるが、その役割を果たしえるだろうか。


posted by ゆがふ沖縄 at 13:17| Comment(1) | 財政援助・沖縄予算 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月25日

沖縄予算への評価

沖縄予算への評価

2012年度の沖縄予算が2937億円と決定した。自由度の高い一括交付金は、1,575億円。

本日(1225)の琉球新報に「2012年度沖縄予算・識者の視点」として私のコメントが掲載されているので紹介する。

2012年度沖縄予算・識者の視点

「普天間」懐柔 意図感じる

求められる制度こなす行政力

          宮田 裕氏

沖縄予算は1998年度の4,713億円をピークに下がり続け、2004年度に2,936億円と3千億円を割り込み、11年度は2,301億円だった。沖縄予算はもはや聖域ではなく、どんどん切り込まれた。


 2,400
億円の概算要求に対し今回の2,937億円は、ほぼ04年度の水準になっている。ピーク時と比較すると約64%だ。その間、沖縄経済はどうなったか。公共工事の減少で建設業は598件倒産し、11千人が失業した。


 使途の自由度の高い一括交付金を沖縄県が獲得したのは悪いことではない。ただし、県と市町村がどういう使い方をするのか全く見えない。

予算は通常、どんな事業をするか、積み上げて査定して決まるもの。しかも東日本大震災という国難があった。本来、概算要求から500億円も上乗せされることはあり得ない。類例もない。しかも政府は直前まで厳しい認識を示していたのに、電光石火のごとく決まった。普天間問題で沖縄の懐柔を図ろうという政治的判断、配慮が感じられる。基地とリンクさせる決着の仕方なのか。


 一括交付金になったことで制度が変更された。制度が変われば予算配分などの方程式も変わるわけだから制度をこなす行政力が求められる。4月からの予算執行は大丈夫か、と疑問も出てくる。


 県は総合事務局の廃止を掲げたにもかかわらず、同局の業務を引き受ける態勢、ロードマップなどを示すことができなかった。地方のことは地方に任せた方がいい。ただ県の受け皿づくりができていない。


 今後、一括交付金をめぐって市町村間の分捕り合戦も予想される。予算を査定する知事に対し、査定される市町村長はおのずと弱い立場になる。予算の査定基準、配分方法、執行体制の工程表の明確化、説明責任が求められる。配分や査定に対し、県議会のチェック機能が非常に重要となる。費用対効果の検証をきちんと行い、県土の均衡ある発展のため偏らない予算配分が求められる。(談、琉球大学非常勤講師、元沖縄総合事務局調整官)



posted by ゆがふ沖縄 at 12:04| Comment(0) | 財政援助・沖縄予算 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月21日

「沖縄甘やかすな」再燃

本日(1221日)の沖縄タイムスに、私の論壇が掲載されている。その内容を紹介する。


□ □

20111221日・沖縄タイムス「論壇」


「沖縄甘やかすな」再燃  政府姿勢、復帰時と変わらず    宮田 裕

           

政府、沖縄振興策に予防線。竹蔵副長官・財政難でハードル高い(1120日付本紙報道)。報道によれば、竹蔵誠官房副長官は県側との意見交換の中で「東日本大震災を受け、財政が厳しい。制度的にかなり困難」として県要望の一括交付金3000億円などに否定的な考えを示したという。新たな制度要求への予防線であり、「沖縄を甘やかすな」ということだろう。

このような発言は今に始まったことではない。沖縄復帰の時、琉球政府が要望した特例措置に対して本土官僚から「甘やかすな」、「厳しく対処せよ」という意見が日本政府沖縄事務所に寄せられたからだ。


 日本政府沖縄事務所長・岸昌さん(沖縄赴任後は自治省官房長、大阪府知事を務める)は、本土官僚の沖縄認識に非常に驚き、19694月、沖縄タイムス論壇に「沖縄復帰の精神」を寄稿する。その一端を見てみよう。


 もう、沖縄へは、十数回来ている某省のA課長が私の事務所を訪れた際、次のような質問をした。

A課長:「復帰準備委員会で話し合ったとき、BC両氏とも、沖縄側から復帰に際して暫定措置や特例措置の要求がたくさんくるだろうが、甘やかさないで厳しい態度で臨むべきだが、岸所長はどう思うか」

岸「5年や10年は瞬時に等しい。あっという間の過ぎ去ってしまう時間といってよい。そういう特別措置を惜しんで、沖縄復帰を再び琉球処分≠フ再現を思わせる行政は、決して当を得たことではない」 

さらに次のように述べている。「日本の官僚に沖縄の心がわかるだろうか? 困窮と挫折と不安の中から祖国復帰を叫び続けてきた沖縄の心が・・・。この人たちが沖縄の復帰問題を取り扱うことは沖縄にとって不幸なのではなかろうか」


 今回、県が要求している一括交付金等沖縄振興メニューに対する政府の拒否反応は、復帰時に見られた「沖縄を甘やかすな」の残り火の再燃とみるべきだろう。


 民主党が政権公約の目玉としたのは、地域主権であり、一括交付金であったはずだ。しかし、官僚の間ではその議論は深まっていない。


 2012
年度沖縄振興概算要求を見ると、政府は県が要求した一括交付金を否定し、従来の振興予算の枠組みで要求した。補助金制度の弊害を克服するところから発想された一括交付金を、補助金を温存したまま要求しているが、政府から踏み込んだ説明はない。


 来年は復帰40年。新たな制度設計に向けて、政府は沖縄振興の「建築家」として自立達成の設計図を描いてほしい。
posted by ゆがふ沖縄 at 14:25| Comment(0) | 財政援助・沖縄予算 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする