2011年12月12日

概算要求を読む

沖縄タイムスは、2012年度内閣府沖縄担当部局予算について、3氏インタビュー記事を掲載した。宮田裕(上)・吉元政矩(中)・川瀬光義(下)の順で掲載された。2011119日の紙面で掲載されインタビュー内容は以下のとおり。

概算要求を読む(上) 「自由な予算には遠い」

 「振興の枠組み変更 議論必要」───宮田裕氏(琉大非常勤講師:地域開発論)


 内閣府沖縄担当部局は、総額2,437億円の2012年度概算要求をまとめた。県は沖縄振興一括交付金(仮称)の創設を強く要求したが、国の補助金事業を積み上げた要求額と税制改正のセットなど、内容はこれまでの振興予算をほぼ踏襲している。概算要求の中身から新たな沖縄振興の枠組みをどう見るのか。内閣府職員や県副知事、識者などそれぞれの立場で沖縄振興に携わった3氏に聞いた。(聞き手=政経部・黒島美奈子)

─内閣府沖縄担当部局の来年度沖縄関連予算の概算要求が提示されたが、予算額(2,437億円)はこれまで同様、国の補助金制度に沿った積み上げによるものだ。どう評価するか。

「県が最重要課題として政府に要望してきた『自由度の高い予算』からは、遠い結果だ。ただ、3千億円規模の一括交付金という県要望の根拠も薄く、国が従来通りに予算を組むのは自明の理といえる」


─なぜそうなったのか。


「従来の沖縄振興は、他県にない高率補助と各省庁の予算を内閣府でまとめる一括計上方式だ。これに対し、県が要求する一括交付金は、これまでの沖縄振興体制の枠組み変更を前提とする。だが、こうした変更について、県と国(政府)で議論した形跡はほとんどない」


─ 一括交付金括交付金実現で必要な枠組み変更とは。


「例えば、県が主張する一括交付金の中には、沖縄総合事務局が担う国直轄事業1千億円が含まれるが、同事業を引き継ぐには、県庁組織の改編も必要だ。@現行の事務局のどの程度の組織、人材を県庁のどこに引き取るのか、引き取らないのかA人件費など義務的経費も増えるわけだが、それをどう担保するのか─など具体的な方策を示したロードマップが必要だろう。事業を担う新たな受け皿や、受け皿づくりの作業工程もない中で、単に事業だけを引き継ぎたいという主張は通らない」


─仲井真知事は同事務局の廃止・移管を国に要望しているが、県自らの作業工程は示されていない。沖縄振興をめぐる県と政府の折衝で課題は。


「一つには、県が主張する3千億円の根拠だ。東日本大震災で多額の復興予算を必要とする国難の時代に、なぜ沖縄特例の3千億円が必要なのか。全国では足りない財源を確保するため増税論も噴出している。国民が新たな負担を強いられる可能性がある中、県が主張する3千億円の根拠はあまりに薄い。考えられる特別な理由は米軍基地の負担だが、それだと沖縄振興と米軍基地は引き換えということになる。県はどう説明するのか」

3千億円の使途、分配方法の具体策も示されていない。今回、県は国との予算折衝で使途を示さなかったが、一括交付金の制度設計があいまいな中、使途の見えない予算を国が交付することは考えにくい」


─政府の課題は。


「民主党が政権交代の目玉としたのは地域主権であり、一括交付金の実現であったはずだ。しかしその議論は深まっていない。本当に地域主権改革に着手するなら、沖縄が要求する一括交付金を全国の先行事例として議論し深めていく姿勢が必要だろう。だが今のところ政府内には一括交付金を、沖縄独特の制度として従来通りの振興策の枠組みに位置づけようとする考えが濃厚だ」


─今後の見通しを。


「補助金制度の弊害を克服するところから発想された一括交付金を、補助金を温存したまま要求する─という現行の沖縄振興の議論自体、矛盾している。このままでは、県が目指す自立の実現は難しい。県も政府も、沖縄振興という枠組み自体が“魚の釣れない釣り具
”そのものだということに早く気付くべきだ」



posted by ゆがふ沖縄 at 11:06| Comment(0) | 財政援助・沖縄予算 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月26日

米軍統治下の沖縄援助閣議了解文書

*2010/11/26 外交資料館で開示(CD−R番号 H22-005)


日本国政府の琉球政府に対する援助に関するアメリカ合衆国政府との協議に関するわが方の方針に関する閣議了解

                       昭和37年9月13日
                       外  務  省


政府は、沖縄住民の安寧福祉及び経済開発に資するために、琉球政府に対し援助を供与することについて、アメリカ合衆国政府と協議するに際し、次の方針によることとしたい。


(1)援助の目標は、琉球政府(市町村を含む、以下同じ)の諸施策、事業等の水準を本土相当地域並みにに引き上げ、あわせて住民の所得の向上に資することにおくものとする。


(2)援助の重点は、社会保障及び教育、経済開発及び国土保全並びに各般技術援助におくものとする。


(3)援助の方式は、わが方の予算及び法令の定める範囲内において、各会計年度毎に、個々の事業に対して行うものとする。


(4)援助の執行については、援助物品及び金員が公布の目的に従って適正に使用され、かつ、援助の効果を確認することができるように措置を講ずることとするとともに、会計検査を行いうるようにするものとする。


(5)援助の効果的実施を期するため琉球政府の要望に応じて、琉球政府の行政能力の改善に協力するものとする。


(6)沖縄現地に日米琉懇談会(仮称)を設置すること等により、援助について沖縄住民の意思が反映するように配慮するものとする。


前記援助に関する日米協議と併行して、沖縄住民の自治権の拡大について建設的提案を行うものとする。


説明書


1.昨年6月、池田総理大臣訪米に関連し、日本政府は米国政府に対し沖縄における事態の改善のため若干の提案を行ったが、池田総理大臣とケネディ大統領との会談において、米国が沖縄住民の安寧福祉の増進について、一層努力し、日本がこの目的のため、米国と引き続き協力するとの合意が成立し、その具体策については、東京で折衝することが了解された。


2.米国政府は、同年10月、関係各省代表からなるケイセン調査団を沖縄に派遣して、現地の実情を詳細に調査した結果、本年3月、ケネディ大統領声明をもって、沖縄に対する行政命令の一部を改正するとともに、新たないくつかの特定の措置をとるべきこと、特に「琉球住民の安寧と福祉及び琉球の経済開発を増進するための援助供与について、米国と日本との協力関係実施に関する明確な取り決めを作成するため、日本政府と討議を開始する」との意向を明らかにした。


3.よって政府は、本年4月以降本件取り決めに関する日米協議を開始すべく諸般の準備を進めるとともに、米国側に対し、来るべき日米協議においては、上記取決め以外に沖縄に関する広汎な諸問題に関しても建設的提案を行いたい旨を申し入れたところ、米国側はかかる日本側提案は今次日米協議の枠外で検討することとしたい旨回答した。

さらに、沖縄援助のための日本側計画立案に必要な資料収集と実情調査のため調査団を沖縄に派遣することについても合意を成立したので、6月15日より8月8日までの間、小平前総務長官、古屋総務副長官をはじめ、総理府、外務、大蔵、文部、厚生、農林、通産、運輸、建設、自治及び経済企画の各省庁の職員で構成する第三次にわたる調査団を沖縄に派遣した。

これらの調査団は現地米側当局並びに琉球政府等と沖縄の民生向上および経済開発の方途の大綱について話し合いを行った。

その際、キャラウェイ高等弁務官は調査団に対し、米国民政府が琉球政府と協議して立案中の沖縄開発5ヵ年計画の構想について説明し、その計画実施に当たって明年度以降5年間に45項目、約4千万ドル(毎年度平均約30億円)の資金が不足する見込みであると述べたが、現地当局としては、この不足額を日本政府の援助に仰ぎたいと考えている模様であった。

前記調査団の調査結果は、別途総理府より閣議報告のとおりである。


4.わが方の沖縄援助に関する日米協議については、大平外務大臣の渡米前、すなわち、9月13日、同大臣とライシャワー大使の会談を行い、同会談において@日本側調査団の調査の結果に基づく沖縄の経済開発及び民生向上の方途について総括的見解(その大綱は本日請議する閣議了解案記載のとおり)を述べるとともに、A政府の具体的援助施策及び金額に関する提案は、米国政府より早急に長期計画ないし、明年度計画に関する具体的な提案の提示を受け、これを検討の上さらにわが方の対案を提示して協議に入れたい旨申し入れることとしたい。


なお、9月中旬には米国政府より日本側が供与する明年度の沖縄援助に関する具体的提案の提示を受け、予算編成期には結論を得る目途で対米交渉を進めたい所存である。


 

posted by ゆがふ沖縄 at 16:22| Comment(0) | 財政援助・沖縄予算 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月21日

沖縄投入予算 0.6%

沖縄投入予算 0.6% 復帰後・国総額比
沖大・宮田氏試算 人口比に満たず
多額で優遇「事実なし」

 2010年12月6日、上記タイトルで沖縄タイムスに私のインタビュー記事が掲載された。参考までに新聞の切り抜き記事とその記事を以下に記す。

新聞の切り抜き記事 「沖縄投入予算0.6%」


budget01.jpg 沖縄が本土に復帰した1972年度から2010年度までの39年間に国から投入された沖縄振興事業費を含む沖縄関係予算は総額15兆8千億円で、同期間の国の一般会計歳出総額2469兆9千億円の0・6%にとどまることが分かった。米軍基地関係費用を除くと10兆8千億円となり、国予算総額比では0・4%とさらに低い。


 元沖縄総合事務局調整官で沖縄大学地域研究所特別研究員の宮田裕氏が、財務省のデータなどを基に分析した。1972〜2009年度までは補正後ベース、10年度は当初予算で試算している。


 基地関係費用を除く沖縄関係予算の国予算総額に占める割合(0・4%)は、地方交付税の算定対象にもなる土地面積(全国比0・6%)や人口(同1%)を下回る。宮田氏は「国家財政からみると、必ずしも沖縄に多額の財政投入がなされている事実は見当たらない。公平な予算配分という観点からみれば逆に、現在の人口割で8兆8千億円の財政投入が足りない計算だ」と説明する。


 こうした傾向は復帰前から続いている。米軍施政下の沖縄へ国の財政支援が始まったのは1963年度から。72年度までに投入された総額は1232億円で、同時期の国予算総額68兆9千億円の0・2%だった。


budget02.jpg



 宮田氏は「戦後の復興期に国からほとんど財政支援を受けることができなかったことは、現在も沖縄が抱える本土格差の原点となっているのではないか」と指摘。「加えて復帰を契機にしたその後の沖縄振興策でも特段の財政支援があった形跡は見られず、『沖縄を優遇してきた』とする一部の政府関係者の論理は当たらない」と話した。(黒島美奈子)

posted by ゆがふ沖縄 at 03:39| Comment(0) | 財政援助・沖縄予算 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする