17年度予算を巡り、菅義偉官房長官は基地と振興策はリンクすると語り、鶴保庸介沖縄担当相は「消化できないものを無理やりお口開けて食べてくださいでは、血税を無駄遣いしているという批判に耐えられない」と予算減額を示唆した。
一括交付金は前年度当初から255億円減の1358億円としたことは、国の言いなりにならない県政への「兵糧攻め」だ。
12年度予算は辺野古移設懐柔策として2400億円の概算要求に対し、500億円上積みし2937億円で政治決着。13年度予算も概算要求額に64億円積んで3001億円に決定。仲井真弘多知事が辺野古移設を承認した14年度予算は、対前年度比459億円増の3501億円計上し沖縄への配慮を示した。
翁長雄志知事就任直後の15年度予算は、概算要求から450億円削り3340億円で前年度161億円減少。16年度は3429億円の概算要求から79億円減額し3350億円だった。
沖縄振興は苛烈な戦禍、27年間の米軍支配等の沖縄の特殊事情を考慮し国の責任で実施するものだ。高率補助、一括計上の予算編成システムは本土との一体化を目的として制度化された。
2015年、16年に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」は、沖縄振興について、成長するアジアの玄関口として沖縄の優位性と潜在力を活かし、日本のフロントランナーとして経済再生の牽引役となるよう、国家戦略として推進する」とある。
2016年1月、安倍晋三首相は施政方針演説でアジアとのハブである沖縄の成長の可能性を開花させるため、今年度を上回る沖縄予算の確保を約束したが、17年度予算概算要求で基地問題と結びつけ一括交付金を大幅に減額した。
一括交付金は自由度が高く観光や産業の振興、離島振興など幅広い分野で活用されているが、衝撃的な切り込み方だ。
内閣府は、「一括交付金はソフト事業、ハード事業で繰越額が出ている」と減額理由を言い始めたが、執行率低下は煩雑な国との調整に時間がかかり、交付決定が遅れたのが原因だ。
15年度の執行率はソフト分77%、ハード分72%で制度創設以来改善されている。突如として17年度概算要求で繰越率を指摘して減額することは、巧みな「基地リンク論」とみるべきだろう。(本稿終わり)