2012年02月18日

宮田裕の「アジアリポート」(8)

宮田裕の「アジアリポート」(8)


 シンガポール・ワン計画を聴くために、情報通信開発庁(IDA)を訪れた。IDAは、サイエンスパーク内の緑に包まれ、都市デザインの美観を備え落ち着いた環境にあった。近くにはシンガポール大学がある。マネージャーのデビッド・チヤンは玄関で待機し迎えてくれた。

 インターネットの普及率がその国の情報化の指数を表すという。シンガポール政府は、情報技術(IT)分野をシンガポールが比較優位を発揮できる分野として、長期的な戦略投資を行っているようだ。

■ IT2000マスタープラン
 1992年に発表された「IT2000計画」は、世界の国家情報インフラ政策の火付け役となり、現在はIT2000計画を実現すべく、情報インフラである「シンガポール・ワン計画」及び「エレクトロニック・コマース・プログラム」の積極的な推進を図っている。

 IT2000計画は、現在シンガポールのITマスタープランであり、シンガポール・ワンは実際のインフラとマルチメディア・アプリケーションを提供する計画といえる。同マスタープランは、シンガポールをインテリジェント・アイランド化するための計画であり、社会生活のあらゆる側面における(職場・家庭・娯楽)ITの採用を推進するものである。IT2000マスタープランの目的は@シンガポールを情報のグローバル・ハブとして位置づける、A国民生活の質的向上、B経済成長の牽引車としての役割、C地域社会と国際社会のネットワークによるリンク、D個人の能力向上となっており、導入当時から目に見える形で施策を実施してきた。スマートカードの大規模な導入、電子マネーであるキャッシュカードの導入、高速道路の電子課金方式等を導入しているようだ。


 
初等・中等教育の情報化も取り組まれており「教育の情報化5カ年計画」により、2002 年でカリキュラムの30%をIT関連とする意欲的な教育分野の情報化を進めている。パソコンを生徒2人で1台とする、教育IT化推進体制である。


シンガポール・ワン計画 

 シンガポール・ワン計画は、シンガポールを「インテリジェント・アイランド化」するためのマスタープランである。IT2000計画下の主要戦略的施策であり、国家全土をカバーする情報インフラとしては世界初のものである。


 シンガポール・ワン計画の目的は、シンガポール国内に高速ネットワークプラットファームを設立し、職場、家庭、学校等全ての環境にマルチメディアサービスを提供することである。


 主要目標は@国民全体にマルチメディアサービスの恩恵を与える、Aマルチメディア産業を発展させ、シンガポールをマルチメディアセンターと位置づける、Bシンガポールをマルチメディア開発の革新の場として位置づけることとしている。


 1999年末のシンガポール・ワンのユーザーは10万人加入、2001年までに40万人に達する見通しである。


 シンガポール・ワン計画の利用状況を見ると、1998年末までにほとんどの家庭から、二つの方法のいずれかでシンガポール・ワンへの接続が可能となっている。一つは、電話回線経由のシンガポール・ワンADSL接続。もう一方は、ケーブルネットワーク経由のケーブルモデム接続。自宅にパソコンがなくてもショッピングモールに設置されたキオスク端末からもシンガポール・ワン・サービスができるようになっている。 


 多くの学校や図書館においてもシンガポール・ワンが利用可能となっている。シンガポール国立大学等においてもシンガポール・ワンへの接続サービスを提供しており、約3万人が利用している。また、小学校、中学校、高等学校におけるシンガポール・ワンへの接続校数は、1998年末で365校に達する。


 政府はこれまで2年間で820万ドルをかけてシンガポール・ワン、スクールプロジェクトを開発。19988月までに全ての学校の接続が完了し、各学校がシンガポール・ワンに接続可能なコンピューターを少なくとも2台以上所有している。


 シンガポール・ワンの発展はアプリケーション開発にかかっているようだ。現在170余りのマルチメディア・アプリケーションが利用可能だが、その中で人気のあるアプリケーション は「ニュース・オン、デマンド」、「オンラインショッピング」「映画予告と座席予約」「中国語コンテンツサービス」、「電話帳サービス」「長距離学習サービス」等である。


 今後は、企業間で利用されるアプリケーションとサービスを増加させることが重要で、その主流はEC関連アプリケーションとなると見られる。特に、NCBでは地元企業のEC利用を促進するため、EC参加企業に対する優遇政策を進めていく予定である。


 ECへの取組みは、通関申告から許可まで1件あたり2日を要していたが15分で処理されスピードアップが図られている。コストは書類作成経費12ドルが3ドルに大幅に削減され、文書転記、ファイリング不要等により、30%の生産性向上、50%の稼働削減となったという。取扱貨物は1人あたり月1000コンテナから5000コンテナに増大しているほか、製造業の部品調達はECネットワークでビジネスが展開されている。

 高速広域連帯ネットワーク及び洗練された市場を背景に、シンガポール・ワンはマルチメディアサービスを研究開発するための理想的な環境を提供している。


 ※ ※ ※
◎シンガポール
1.面積
710平方キロメートル(東京23区(約700平方キロメートル)とほぼ同じ)
2.人口
508万人(うちシンガポール人・永住者は377万人)(2010年)
3.民族
中華系75%、マレー系14%、インド系9%、その他2
4.言語
国語はマレー語。公用語として英語、中国語、マレー語、タミール語。
5.宗教
仏教、イスラム教、キリスト教、道教、ヒンズー教

※ ※ ※
■ 最後に

  マレーシアの「マルチメディア・スーパー・コリドー」、「シンガポール・ワン計画」を概観したが、沖縄においてもアジア・太平洋地域はもとより国際的な情報通信のハブにするには、21世紀の新しい世界に適応する基盤整備、人的能力にかかっていると思う。 沖縄のポテンシャルは、米国から中国を結ぶ太平洋横断光ファイバーの陸揚げポイントになっており有利な条件にある。ハブとしての広範な情報通信技術インフラは国家プロジェクトとして取り組む必要があるのでなないか。


 なぜなら、沖縄がよくなることで日本がよくなる、沖縄がアジアのハブとしての競争力を獲得し、日本の新たな経済成長の機関役としてIT関連産業を集積し期待する。その役割を、国家プロジェクトとして沖縄に付与し、沖縄で規制緩和を一層進め、情報化社会の持つ「オープン・ネットワーク」を築く戦略が今後求められてこよう。(終わり)

注:本リポートは20002月、ポスト第3次沖縄振興計画を検討するに当たり、沖縄開発庁「沖縄振興総合調査」の一環としてタイ、マレーシア、シンガポールの情報通信産業調査を実施した際の日誌をもとに作成したものである。



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2012年02月17日

宮田裕の「アジアリポート」(7)

宮田裕の「アジアリポート」(7)


国際物流のハブ・シンガポール

上空からみるシンガポールで思い浮かぶのは、世界で有数のコンテナ取扱量を誇る貿易港である。限りなくガントリークレーンが続く。


 シンガポールは世界130カ国・740港と航路を有し、アジアにおける海上輸送の中継基地として名声を馳せている。毎週、日本向け28便、欧州向け35便、北米向け21便の定期コンテナ船が行き交い、アジア域内の各港との間に100隻以上のフィーダー船(小型コンテナ船)が運行しているという。

 98年の実績をみると、入港船舶数(14922隻)と燃料補給量(18064000トン)、コンテナ取扱量(1514TEU20フィートコンテナ換算個数)で世界第1位、貨物取扱量(312322000トン)で世界第2位を誇る。

 巨大なアジアのハブ空港として知られるチャンギ国際空港に着陸した。チャンギ国際空港は24時間空港として816月に開港、9011月には第二ターミナルの運営が開始された。全長4000メートル、幅60メートルの滑走路が2本あり、1時間に最大66便の離発着に対応できるという。現在、第一ターミナルの拡張工事と第三ターミナルの新設工事が着手されていた。空港までの地下鉄工事も進められており2001年には、完成の予定だという。


 市街地へ向かったが道路は緑化で覆われ、ゆとりと落ち着きをもたらす。オーチャオ通りの緑化へのこだわりは、常緑の日陰で涼風を導き都市景観にも息吹をもたらす。高層ビルが立ち並び驚くべき経済成長に感心する。車中、日本開発銀行のアジアトレンドを開いていると機能的に整備された社会資本インフラを魅力として、シンガポールには世界の多国籍企業5000社のうち半数近くがアジアの拠点として進出している。まさに、シンガポールは商流、物流、金融等のハブ機能を担う国際都市である。


 
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世紀のもう1つのハブ機能「シンガポール・ワン」計画を支える情報・通信産業の現状を聴くために、NTTシンガポールを訪れ松山社長、酒見プランニングマネージャーから話を聴いた。


電子政府の構築
 松山社長の話によれば、シンガポールは外資導入に積極的であり、特にハイテク製造業、設計、エンジニアリング、バイオテクノロジー等高付加価値型産業を歓迎しているという。

  電機通信行政は高度に発達しており、「情報技術通信省」「情報開発庁」がある。前者は電気通信・郵便・運輸・情報技術に関わる行政を担当、後者は従来の電気通信庁、国家コンピューター庁、放送庁の技術部門が統合され、電気通信と情報技術分野全般を統括機関9912月に設立された。


 コンピューター普及率は50%(日本20%)、インターネット普及率は17%(日本10%)。インターネット普及率はその国の情報化の指数を表す。シンガポールのインターネット普及率は、日本を凌駕しアジアではトップクラスである。

  酒見マネージャーから「電子政府の構築」について話を聴いた。シンガポール政府はネット上にて政府関連サービスをできるよう、電子政府の構築を行ったという。また、各種サービスが提供できるよう法律の整備をおこなっている(九八年七月電子取引法制定、992月、商電子取引認証規則制定等)。


 オンラインサービスとして、@電子メールによる個人所得税申告サービス(税金サービス)、A個人年金による残高照会等のサービス(年金サービス)、B警察、国防に関するサービス、運転免許試験日予約(内務省サービス)、B政府作成資料等のネット販売(政府ショップフロント)等である。

 キャッシュレス社会の実現を図るため、デビット・カード(キャッシュカードによる即時決済システム)によるショッピングは10年以上前から実施している。ICカード(電子マネー)は一九九六年に導入され、200万枚が流通している。主な用途は車両通行料金の自動徴収システム、バーチャルモールでの決済やお店での小口決済に利用されている。今後、駐車料金やバス、地下鉄での利用が検討されているという。




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2012年02月16日

宮田裕の「アジアリポート」(6)

宮田裕の「アジアリポート」(6)

 まず、はじめに全体概要を鳥瞰しよう。


 スーパー・コリドーは生き残りをかけてマレーシアを創造、あるいは改造する計画だが、世界の眼が向けられている。サイバージャヤの中核部分は2800ヘクタール。1998年完成の予定であったが、約半年遅れの19997月正式オープンした。 


■ サイバージャヤ・プトラジャヤ開発の状況
 MSCの中心地、サイバージャヤ、プトラジャヤの状況を見ると、7月の正式オープンを受けて、プトラジャヤには一部政府機関(首相府)が 入居していた。サイバージャヤにはMDS本社サイバー・ビュー・ロッジ、NTTMSC、テレコムマレーシア(一部未完成)マルチメディア大学が完成、NTTが事業開始、マルチメディア大学では学生が学んでいる。その他の施設では、4月に政府が発表していたインキュベーションセンターが2カ所完成しており、3番目のセンターを建設中であった。インフラの整った貸しビル(オフィス空間を各企業に提供)であるインキュベーションセンターには、IT関連の中小企業がすでに複数入居しており、マルチメディア大学敷地内にあるインキュベーションセンターでは、38社が入居済みとのことであった。

 通信のバックボーンは、テレコムマレーシアが整備する。プトラジャヤ地域は10Gのバックボ−ン、サイバージャヤ地域は2.5Gのバックボ−ン。通信インフラは埋設敷設が終了。各施設には2Mbpsの回線が接続されている。通信コストに関してMSC内は優遇されており、その他の地域より国際回線使用料が15から20%程度安いとのことであった。

 400ヘクタールのマルチメディア工業団地には、世界有数の約40社が進出決定、用地はほぼすべて埋まっている。日本からは、NEC、富士通の合弁企業が進出するようだ。MSCステータスを取得した企業は、20007月までに、進出することが義務づけられている。

  199911月末時点でサイバージャヤ(2800ヘクタール)進出ステータス企業は339社。このうち、79%にあたる268社がMSCステータスを取得している。

 高度な知識を有する技術者が、MSC計画の鍵であるとの認識の下、人材育成に力を入れていた。MDC社によれば、2005年までには、10万人以上の高級技術者を供給することを予想している。

マルチメディア大学

 インターネットの進展は、資本主義経済の本質を変えるという。情報技術は文化の発展、文明の転換をもたらすともいう。マハティールの戦略は、情報化のトップランナーの人材育成にあった。マルチメディア大学は緑の丘の上にあった。すばらしい環境がそうさせるのか爽快な気分になる。しかし、理想郷ともいえるその偉容さには驚いた。

 サイバージャヤの一角にある同大学は、テレコムマレーシアが100%出資する民間私立大学。サイバージャヤキャンパスが設置されたのは19997月であるが、199510月設立されたマレーシア初の民間大学テレコム大学の姉妹キャンパスとなっている。


 大学設立の背景は、MSCIT人材(ヒユーマンリソース)を確保することで、MSCで働くITスキルを身につけた人材を数多く排出するための大学である。スタンフォード大学がシリコンバレーの人材をサポートしているのと同様だと言える。サイバージャヤキャンパスでは、マルチメディア学部、IT学部があり、今後MSCの活動を支える人材を育成するものと期待されている。学生は5800名、2002 年には学生数12000人を見込んでいる。199710月からは、修士コース(80人)、博士コース(42人)を開設。講義内容は全てオンライン化、学生は講義をウェーブで見ることが可能である。特に、テキストベースのみならず、映像、音声を利用した講義で教授は全ての講義を電子化している。アクセスにはIDとパスワードが必要である。

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