2012年02月15日

宮田裕の「アジアリポート」(5)

宮田裕の「アジアリポート」(5)


 21世紀の沖縄社会に新しい期待を込め、沖縄の国際情報化への取組みへの手がかりがつかめればとの思いからマレーシア社会に新しい変革をもたらすマルチメディア・スーパー・コリドーを紹介する。

■マルチメディア・スーパー・コリドー 
 マルチメディア・スーパー・コリドーは、まず未来志向かつ政策志向型ということだ。NTTマレーシアの堀田社長は開口一番に語る。マレーシアのシステム開発に当たって在勤三年。マレーシアの情報技術と通信技術の一元化を背景とした情報ネットワーク社会の形成に情熱をかける。

 掘田社長の説明によれば、1995年8月25日に新行政首都であるプトラジャヤの起工式において、マハティール首相によりマルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)計画が発表されたという。MSCとは、プトラジャヤ新行政都市、サイバージャヤ、ツインタワー、クアラルンプール新空港を含む東西15キロ、南北50キロの地域で、マルチメディア技術を活用した都市開発を行う計画である。マハティール首相自信の強い政治的意志により推進されている。


 MSC計画は、2020年に先進国入りするとの「ビジョン2020」を達成するため、これまで、マレーシア経済を牽引してきた製造業とあわせた、新たにIT産業を中心とするサービス・知識集約型産業を育成することを目標としている。

 MSC地域内のサイバージャヤ 開発対象地域は、約2800ヘクタールであり、2002年までに150企業、昼間人口は10万人(居住人口は8万人)程度を予想している。世界一級の通信インフラを完備させるものである。

 MSC計画推進のため、規制緩和、優遇措置を政府公約とし世界的な企業を誘致することを狙っている。進出企業に対し、ワンストップサービスを提供するため、マルチメディア開発公社(MDS)が設立され、MSC計画の重要な役割を担っている。


 前述の政府公約に従い、サイバー法の整備、誘致企業に対して@最長10年までの法人税の免除、A外資規制の撤廃、B外国人雇用の自由等の優遇措置などを実施している。マレーシア政府は、MSC計画のフラッシング・プロジェクトとして@電子政府、Aスマート・スクール、B遠隔医療、C研究開発、D多目的カード、E国境のないマーケッティング、F世界的製造拠点の7つのプロジェクトを提案した。


 7プロジェクトのうち、電子政府、多目的カード、遠隔医療、スマート・スクールの4プロジェクトについては、入札方法により各社から多くの提案が提出された。それぞれ、マレーシア行政近代化・計画部、中央銀行、文部省、厚生省が中心となって検討が進んでいる。参加企業は、延べ70社以上となっている。今後、最適な企業等による企業コンソーシアムが構成されることもあり得るようだ。

 第7次科学技術計画(19962000)においては、戦略的な優先分野として情報通信技術、マイクロエレクトロニクス、バイオテクノロジー、先端生産技術、新素材技術、環境及びエネルギー技術の6分野を定めており、情報通信技術の振興に特に力を入れている。

 情報通信技術のキーパーソンとして堀田社長がいるが、原島マレーシア大使(前沖縄大使)の外国人観光誘致振興策の政策のブレーンでもあるという。堀田社長はシステマティックなアプローチでマレーシアの情報戦略を説明していたが、聴く人に「わかった」という実感を与えるように人を惹きつける。マレーシアで考えたことは、不完全な知識でアジアをみていたが、マレーシアは「112ではなく、34である相乗効果の発想」で国造りしていることだった。


 沖縄経済の現状を語るにも、将来を語るにもそれが絵に描いた餅ではなく、何となく自分たちが実現できそうだ、こうすれば今とは違った動きが出てくるという企画力、構想力ではないだろうか。

 自立性、適応性、外部環境への反応性から沖縄がいかに目覚めるか、ソフトウエアーの世界でなにを学ぶか、沖縄の可能性として何を構築していくかという視点でマレーシアの「新しい現実」を知らねばならないだろう。沖縄が国際情報特区構想を実践する自前のターゲットは何か。戦略は何か。県民が納得し、結果として勢いよく動くものでなければならないと思う。サイバージャヤ開発現場に足を運んだ。





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2012年02月14日

宮田裕の「アジアリポート」(4)

宮田裕の「アジアリポート」(4)

 タイからマレーシアに向かった。


 広大なクアラルンプール新国際空港に降り立ち、そのスケールの大きさに吃驚した。80のゲートと2本の平行滑走路を備えた空港は森の中にあった。環境的にも美しくマルチメディア・スーパー・コリドーにふさわしい国際的な玄関だった。熱帯の強烈な太陽と空気、原色鮮やかな熱帯植物、陽射しが強く地面から焼き付ける暑さで喉が渇き、ミネラルウォーターが気持ちよいほどに体に吸収されていく。
 空港から数分でると、高層のコンドミニアムが屹立し近代的なマレーシアの匂いを感じた。クアラルンプールは高層ビルが林立しハイブリッド・アジアの象徴に見えた。マレーシアの人々は豊かさのなかに自分の人生を求めたのであろうか。


 我々は、新時代の未来都市に感慨が湧き、クアラルンプール・シティー・センター、新行政都市プトラジャヤ、情報産業都市サイバージャヤを結ぶ都市開発、マルチメディア・スーパー・コリドー(南北50キロ、東西15キロのエリア)のマハティール構想を聴くためにマルチメディア開発公社(MDC)を訪ねた。

■ マハティールの挑戦
 ジャングルを切り開いてつくったという産業情報都市サイバージャヤは、サイエンスパークに生まれ変わっていた。その一角にMDCはあった。平屋でしゃれたデザイン、すばらしい環境は高度化戦略として位置づけられていた。

 NTTから出向した鈴江マネージャーは、21世紀のマレーシアは世界の情報ハブになると力説し、「マハティールの挑戦」をビデオで紹介した。


 「MSCプロジェクトは世界で初めてだ。我々はアジアにおける情報化時代の成果を求める先端企業のニーズに応えるため、特別に設計された環境を持つ地域を創造しようとしている。このようなプロジェクトは、構想をたてている国はまだない。マルチメディア・スーパー・コリドーは情報化時代のグローバルな促進剤で、そのメカニズムは、先端的な技術を駆使する企業や国、および国境なき世界を皆、豊かにする構想である」。マハティールは21世紀に先進国入りするマレーシアの姿を強調する。 

「マレーシアは急速な工業化を成し遂げ、そのためにかつては一次産品が輸出の100%を占めていたのが、いまでは輸出価格の七八%を工業製品が占めるようになっている。それでもマレーシアは先進国ではない。先進国になるためには、従来通りの製造産業の段階にとどまらず、次ぎに情報産業へ進まなければならない。それを達成するためには全世界の才能と力を借りる必要がある」。クアラルンプール国際空港、世界一のツインタワー、情報をベースとする産業のR&Dセンター、新しい電子政府センターをそれぞれ光ファイバーで結び情報化時代の価値を創造するための新しいパラダイム。ビデオを見ながら、21世紀が近づくにつれてめざましい変化が生じていることを実感した。 

 先行き不透明な時代にあって、きちんとした未来のビジョンを持ち、しっかりと将来を見据える政治家、マハティール。クアラルンプールは21世紀のアジアを代表する国際都市として著しく変貌を遂げようとしている。次回はマレーシア発展の追い風となった情報戦略に焦点をあててみたい。

□ □

◎マレーシア

1.面積
33万平方キロメートル(日本の約0.9倍)

2.人口

2,840万人(2010年統計局)

3.首都

クアラルンプール

4.民族

マレー系(66%)、中国系(約25%)、インド系(約8%)

(注:マレー系には中国系及びインド系を除く他民族を含む)

5.言語

マレー語(国語)、中国語、タミール語、英語

6.宗教

イスラム教(連邦の宗教)、仏教、儒教、ヒンドゥー教
、キリスト教、原住民信仰



posted by ゆがふ沖縄 at 00:08| 宮田裕のアジアリポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月13日

宮田裕の「アジアリポート」(3)

宮田裕の「アジアリポート」(3)


 ジェトロ・バンコクセンターの中川貿易振興部長の話では、近年、頻繁な要人往来をはじめとする人的交流の拡大、円高などを背景とした日本の対タイ投資拡大などの経済関係強化等、両国関係はますます緊密度を増しているという。タイに対する経済協力は、タイの経済発展を背景に無償資金協力は原則終了したものの、技術協力及び円借款を中心に引き続き我が国援助の最重点国の一つとなっているようだ。
   


 対日感情は良好であり、977月に始まった経済危機においても日本は官民あげてタイを支援しており、タイ国民は高く評価しているという。しかし、我が国のタイに対する巨大な経済プレゼンス、タイ人の誇りに日本国内に存在する約37千人もの不法就労者の問題等が重なり合って、複雑な側面があることも指摘された。

■ 日本とタイの経済交流

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 タイの貿易に占める対日貿易の割合は、輸出で16.8%、輸入で28.3%を占め、また、日本からの直接投資は、BO1の承認ベースで、外国投資額の約45%(96年)である。我が国対タイの二国間 政府援助(ODA)は、同国の受け取るDAC諸国からの援助の約7から8割となっている。


 タイ側の関心事項は、投資誘致の他、貿易、地域協力等である。特に、最近タイの貿易赤字拡大のなかで対日貿易赤字が大きいことから、日タイ貿易不均衡問題に対するタイ側の不満が高まる懸念があるようだ。また、今回の経済危機に際し、日本は官民とも積極的な支援を行っており、タイ側の高い評価を得ているとの説明だった。タイ政府としては資金調達に手詰まり感があるなかで、政府が経済回復のための施策を実行するためには新宮沢構想をはじめとする日本からの支援に対する期待感が大きいという説明であった。

 タイからみて日本は輸入元として第1位であり、輸出先としては米国に次いで第2位である。他方、日本からみて対タイ輸出入は、輸出の2.4%、輸入の2.9%程度である(1998年)。

 全体的には、恒常的に日本の出超である。80年代後半以降、タイの経済成長及び日本からの直接投資の急増に伴い資本財・中間財等の輸入が増加し、貿易不均衡は拡大基調にあったが、タイの経済停滞に伴って1996年以降日本からの輸入が減少に転じたため、1998年の対日貿易赤字は80年代末の水準まで縮小した。構造的には、日本からは機械・機器、金属及び同製品、化学製品等を輸出、また、タイからの輸入品は、伝統的に食料品(冷凍エビ、鶏肉、砂糖等)、原料品等であったが、最近では機械・機器の増加が目立っている。

 日本からタイへの投資は、世界全体への投資の3.5%、アジアの中では、インドネシア、中国に次ぎ第3位となっている(1997年度)。これを、タイ側からみると、タイ中央銀行発表の直接投資純流入額(BOI)への申請ベースでは、第1位が日本(36%)、以下米国(22%)、香港(13%)、シンガポール(8%)となっている。


 19859月以降の円高に対応し、日本企業が生産拠点を海外に求める動きが86年以降本格化したが、タイの投資環境が優れていることもあって、日本の対タイ投資は著しい伸びを示した。特に80年代後半は輸出志向型製造業の投資が、90年代前半は部品を提供するサポーティング・インダストリの投資が増加した。1997年の経済危機発生以降、タイ投資委員会(BOI)への新規投資承認申請額は減少しているが、現地合併事業支援のための増資は増加しており、直接投資純流入額は金額シェアともに大きく伸びている。

□ □ □
◎タイ王国

1.面積:514,000平方キロメートル(日本の約1.4倍)

2.人口:6,550万人(20109月)

3.首都:バンコク

4.民族:大多数がタイ族。その他、華僑、マレー族、山岳少数民族等。

5.言語:タイ語

6.宗教:仏教 94%、イスラム教 5

7.略史

 タイ王国の基礎は13世紀のスコータイ王朝より築かれ、その後アユタヤ王朝(1418世紀)、トンブリー王朝(17671782)を経て、現在のチャックリー王朝(1782〜)に至る。1932年立憲革命。


◎政治体制・内政
1.政体:立憲君主制
2.元首:プミポン・アドゥンヤデート国王(ラーマ9世王)(19466月即位)
3.議会
 下院 500名(小選挙区 375名、比例区 125名)
 上院 150名(公選 77名、任命 73名)
4.政府
 首相名 インラック・シナワット   



posted by ゆがふ沖縄 at 00:06| 宮田裕のアジアリポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする