2012年07月25日

沖縄地域開発の系譜(36)

沖縄地域開発の系譜(36)

沖縄経済に関する視察報告C

 昭和43年11月 日本政府沖縄経済調査団


(5)中小企業の育成
 中小企業が沖縄経済とくに雇用の面において占める重要な地位にかんがみ中小企業の組織化、安定化施策を推進するとともに、税負担の適正、財政投融資を含む金融の改善、円滑化に努め中小企業の育成、強化を図る必要がある。
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 大規模企業と中小企業との関係については、その総合的調和の維持と生産品種の専門化を考慮しつつ、業種別中小企業対策の確立に努める必要がある。また、中小指導機関の拡充強化を図るとともに、中小企業の実態を的確に把握するための措置を講ずる必要がある。

(6)観光開発
 工業の開発と並び将来の沖縄の有望な産業として観光があげられる。国民の消費水準の向上、余暇時間の増加はレクリエーション需要を増大させ、観光産業の成長を促進するが、郵送手段の発達は観光地域の遠隔地化を進めることを可能とするので、本土からの沖縄観光客の増加は十分に期待されよう。

 今後のレクリエーション需要は、自然観光の面では現在の静的観光から動的観光へと需要が移行するものと予想されるが、沖縄はその持つ亜熱帯的観光と海岸美かん、海洋性レクリエーションの適地であるので、中流階層に属する国民大衆の自然観光地化を目標に文化財、戦跡等の文化遺産を包含した総合的レクリエーション地区を建設し、観光需要に応える必要がある。

 このため、島内観光資源の開発、保護と併行して交通通信施設、ホテルその他の宿泊施設の整備をはじめ、海中公園等の施設を含む大規模海洋性レクリエーション地区の建設、スポーツ施設、キャンプ場等の集団的整備を図る必要がある。

(7)国土の保全と開発の促進
 沖縄は、台風により年々巨額の国富を喪失している現状にかんがみ、国土の保全については特に留意するとともに、さらに総合的な見地に立って国土の開発を行う必要がある。このため、災害復旧事業、治山治水事業、港湾、空港、臨海工業地地帯の整備等の公共事業については計画的、重点的に実施する必要がある。

 国土開発の一環としての土地の造成は、地域開発、産業基盤の整備の面から考慮しても極めて重要であるが、沖縄は地質構造上珊瑚礁のうえに成り立ち、漁業権の取り扱いについても本土と異なる事情にあること等から埋め立ては比較的容易にできるものと考えられるので、産業立地調査の促進と併行して埋め立てによる土地造成について検討が進められることが望ましい。

 これらの国土開発事業を実施するに当たっては、地域的にも、時期的にも極力経済効果、雇用効果を考慮して行うことが必要である。

 なお、沖縄発展の夢として西表島および尖閣列島海洋資源の開発が想定されるが、その開発の有利性を断定するには現時点では時期早々と考えられ、今後速やかに専門的な学術調査等を行い、その結果を待って開発の時期方式等を決定する必要がある。

(8)雇用の増大
 沖縄の労働力人口は、出来る限り多くの就業の機会を与えるためには、経済規模とくに雇用吸収力の高い部門の生産規模を極力拡大していくことが必要であり、この見地から新産業、新技術についてその開発誘致に努めることが必要である。

 軍関係雇用については、当面離職者対策として、本土法に準じた立法措置を検討する必要があろう。

 なお、基地の態様如何により、経済規模の拡大によってもなお吸収できない労働力人口については、本土等域外に移動する者を除き、公共事業等の計画的施行によって雇用の吸収を図るほか労働の質の向上を目的とする職業訓練制度の整備の拡充および社会保障制度の充実をあわせて講ずる必要がある。


写真:琉球政府(日本政府沖縄経済調査団は琉球政府を訪れ、意見を聞いた)。


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2012年07月24日

沖縄地域開発の系譜(35)

沖縄地域開発の系譜(35)

沖縄経済に関する視察報告B

 昭和43年11月 日本政府沖縄経済調査団


(2)域外取引の円滑化
 沖縄経済の発展に関する政策の基本的方向は、貿易自由化の大勢に即応しつつ域外取引の円滑化に置かれることが必要である。

 このためには、安定経済の基盤のもとで、国際競争力の培養、強化に努めるとともに、産業構造の近代化に即応した商品構成の高度化を促進し、これと併行して外貨獲得率の高い商品の輸出伸長を講ずる必要がある。

 なお、域外取引の円滑化が沖縄経済発展の根幹であることについて広く教育、広報等の機会を通じ一般の認識を高め、真の貿易振興体制を確立することが必要である。


(3)工業の開発
 沖縄経済の持続的発展を確保するためには、工業の開発が必要であり、特に沖縄が日本の最南端にあり、また東南アジア地域との中継基地的位置にあることに着目して、そのための的確産業の育成を図る必要がある。

 工業の開発については、その前提として港湾、土地、用水、電力等産業立地の詳細な調査を実施する必要があり、またこれと併行して、天然ガスその他の島内資源の開発、調査を進める必要がある。

 大規模工業特に技術的先端産業の導入については、上記調査の結果をまってその適否を判断すべきものであるが、そのためにも加工業的中小企業の育成振興を図り、その進度に応じて大規模工業の進出を期待するという現実的方法によることが適切である。


 また、工業の開発については、その基礎となるエネルギーの供給体制が整備されなければならないので、電力公社の琉球政府への移管、充実について検討されることが望ましい。

 工業の開発、貿易および観光の振興に関連して県つされているものに自由貿易地域構想があるが、これについては現地においても諸説あり必ずしも趣旨、適用、効果について明確ではないが、本土復帰後の取り扱いに関し、ここにいう自由貿易地域が我が国の保税制度と実質的に異なる態様のものであるときは、他に及ぼす影響も考慮しつつ、前向きに検討する必要がある。

 なお、自由貿易地域構想とならび現地において関心のあるものに工業開発に関連しての外資の導入があるが、本土において外資導入に関し問題となる業種については、本土復帰後における取扱とも関係することであり、慎重な検討と調整が図られることが望ましい。

(4)農漁業の振興
 農漁業については、今後も沖縄の重要産業として振興を図る必要がある。農業については、主要農産物であり、かつ、輸出物資の大宗を占める甘蔗、パインについて、現状の低生産水準を脱し、生産性の向上を図るため、灌漑用水の確保、漁業基盤整備事業の促進、農業の機械化、省力化、品種の改良、農業技術の普及等各般の施策の推進を図るとともに亜熱帯農業用国立試験場を設け、沖縄特有の農業経営の新しい進路を見出す必要がある。

 甘蔗、パインに代えて、かんきつ、野菜、豆類を沖縄農業の主幹作物として奨励したいとの考え方については、台風常設地帯としての地理的条件から見て、いずれも不適当ではないかと考えられ、当面は現行の糖価支持、パインの輸入優遇措置につき本土消費者等から近い将来批判の起こることも考慮し、甘蔗については奄美のそれと、パインいついては台湾のそれと比肩しうるよう国際競争力を強化することを目標に、生産の合理化、コストの低下に努めることが必要である。

 また、日本の肉用牛基地として、豊富な草資源、未利用の甘蔗梢頭部、パイン粕を活用し、農家経営を前提に肉牛の生産を行うとの畜産振興構想は、沖縄農業の体質強化のため適切であり、積極的に推進する必要がある。

 なお、島内消費用の野菜等農作物の自給態勢の確立は、甘蔗、パイン、肉牛施策と同様緊急に配慮する必要がある。

 漁業の振興については、出漁方式につき、母船式操業方法の採用は全般的な資本、技術の充実、高度化をまって行うこととし、この際は沿岸から沖合そして遠洋へと逐次出魚地域を拡大するという段階的方法によることが望ましく、漁法についても島内消費は少なく本土向けを目的とした底引魚に重点を指向するより、むしろ沖合の巻網魚法の技術を習得して、現在本土から輸入している大衆魚の島内充足を図ることが必要である。

 また沖縄周辺特に東シナ海域は周辺各国の利害が錯綜している関係から、安全操業、資源保護の観点から出魚に当たっては、関係諸国と十分な協調を図ることが必要である。

 農漁業部門は、他部門と比し、一般に生産規模が零細であり、資本装備も劣悪であるので、生産性の向上に必要な財政投融資の確保を図る必要がある。また、農、水産物の価格の適正水準における安定、生産用資材の価格および需給の安定化に努める必要がある。

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2012年07月23日

沖縄地域開発の系譜(34)

沖縄地域開発の系譜(34)

沖縄経済に関する視察報告A

 昭和43年11月 日本政府沖縄経済調査団


(2)雇用の増大

 雇用の問題は、基本的には、経済活動を可能な限り大きくして新しい雇用の機会をつくるとともに、いわゆる不完全就業の改善を図ることがその方向でなければならない。

 しかし、当面は、このような雇用機会の増大方策と併行して公共事業、社会保障等の対策を講ずる必要がある。

 なお、石油精製等の大規模工業の導入、振興による雇用の増大については、この種の工業はおおむね資本集約的産業であるので、そのもの自体では比較的雇用の伸びは大きく期待できないのではないかと考えられるが、関連産業やその他の中小加工工業部門については、生産規模の拡大による雇用吸収についての貢献度も比較的大であるから、これらの部門特に中小企業の雇用を健全にするための育成、強化が必要である。

(3)経済の発展
 増加する労働力人口を雇用するためには、経済規模の拡大、発展が必要であるが、沖縄の産業、経済は本土と同様、今後厳しい国際競争裡における貿易その活路を見出さなければならなくなってきており、さらに近接する発展途上国の低賃金と軽工業中心の産業形態の影響を受けざるを得ない立場に立たされよう。したがって沖縄の産業の中心は、高賃金に耐えられるような技術水準の高い産業へと移行する必要に迫られるものと見られる。

 このため、今後の沖縄の経済は、安定経済を基調に、その産業構造は畜産、観光、製造業の振興を中心にして拡大強化されなければならず、この要請に応えるためには、新産業の育成、産業の合理化、産業立地条件の整備を図るとともに、金融の正常化、企業経営の改善等を進める必要がある。

1.     沖縄経済振興の施策
 沖縄経済の発展を図るには、沖縄の持つ特徴、すなわち比較的余剰労働力を有すること、日本の最南端に位置し亜熱帯地帯であること、アジア諸国に最も近いこと、この三点の活用を図ることが大切である。

 なお、政策遂行に当たっては、各部門において必要とされる諸施策を単に画期的に実施してゆくのではなく、相互に有機的な関連を持たせる総合的に実施していくことが必要である。またその施策は沖縄の経済力、財政力に相応し、内外の経済状態の推移に適応したものであり、しかも実施に当たっては、沖縄本島および先島のそれぞれにつき、その地域の特性に応じ、弾力的、効果的に進められるよう努めなければならない。

 このような配慮のうえで、沖縄経済振興の基本的な施策を述べれば次のとおりである。

(1)産業基盤の強化
 沖縄経済の発展を図るには、畜産、観光の振興とならび第二次産業の振興を中心とした産業構造の高度化が必要であるが、そのためにも交通(港湾、道路、空港)、通信、電力、用水等、産業基盤の整備、強化が進められなければならず、当面は交通機能の強化を目的に港湾の先行的整備を促進する必要がある。

 このような産業基盤の強化のためには、所要の資金が適時、適切に投入されることが必要であるので、設備資金を確保するため投資を合理的に調達するための体制を考慮する必要がある。

 また、資金の調達に当たっては、まず民間資金の動員に期待し、金融の正常化の促進に努めることとするほか、本土資本の導入についてもこれを容易にするための方策を講じ、他方、賃金の運用が長期にわたり、かつ国民経済的に重要であるが、当面市中金融ベースに乗りにくい産業や金利負担を軽減することが特に必要な産業については、財政投融資によってその資金を確保する必要がある。

 なお、これと関連して現在金融調査団(団長・鈴木源吾氏)において検討中の琉球開発金融公社の琉球政府への移管問題については、なるべく早い機会に結論の出ることが望ましい。



posted by ゆがふ沖縄 at 00:17| 沖縄地域開発の系譜 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする