2012年08月30日

琉球政府の復帰施策(18)

琉球政府の復帰施策(18)

■幻の「屋良建議書」(11)

〜沖縄復帰の建議書〜

1971年11月18日


2 開発の方向

 沖縄の開発に当たっては、住民福祉を中心とした社会開発に重点が置かれなければならないことは言うまでもありません。すでに沖縄においても過疎、過密の問題をはじめ、都市問題、公害問題などの発生を見ているところから、生活基盤的社会資本の整備を図り早急な対策が講じられなければなりません。

琉球政府行政主席・屋良朝苗氏.jpg

 
 そのために、公共投資主導型の設備投資が必要であり、道路、港湾、空港、上下水道等の整備と住宅、教育施設、医療施設、福祉施設等の生活環境の整備を徹底的に図る必要があります。


 沖縄経済は、基地依存度の高い消費経済偏重の構造を有し、第3次産業の肥大化と極度に高い輸入依存度を特徴としております。このようなゆがんだ基地経済から脱却するためには、一定の工業化が要求されますが、臨海型装置の場合、雇用吸収効果並びに自治体財政への寄与も少ない反面、逆にその誘致には、産業基盤整備のための財政支出が大きく、しかも公害発生の危険は避けられないのであり、誘致企業の選定にあたっては、慎重な配慮が必要であります。

 そこで、鉱工業は地場産業、既存企業の育成強化を図ることはもちろんであるが、県内に広く雇用の機会を造成するため、非公害型の電子工業、機械工業、縫製加工業等、労働集約型の企業の発展を図らなければなりません。

 臨海型工業については、土地利用計画に基づいて、特定地域を指定して波及効果の高い業種を設定することが必要でありますが、その際特に用水多用型、公害型については厳重なチェックをしなければなりません。なお、沖縄の工業は、中小及び零細企業が多く、本土からの分離による経済規模の制約に加えて、企業振興のための財政措置や長期低利の政策金融の立ち遅れのあることを考慮し国は中小、零細企業に対する特段の保護育成措置を速やかに講ずるべきであります。

 農業についてみると、戦災によって耕地は荒廃し、生産手段もほとんど皆無に帰したほか、その後は軍事基地による膨大な土地の接取という厳しい条件下に置かれてきました。その間、本土に置いて実施されてきた農地改革、食糧管理制度、保護貿易制度など農民保護的な諸政策の恩恵を受けることもなく放置されてきました。復帰に当たって、国はこれらの制度によって、沖縄が当然受けるべきであっただけの保護措置を保障するほか沖縄の農業の独自性を育成しつつ、軍事基地の撤去などによって、農業基盤の整備を速やかに推進しなければなりません。
パイン畑2.jpg

 そこで、従来からの甘蔗、パインアップルの保護育成を推進するとともに農家所得の向上を図るために、今後土地改良等によって農業基盤を整備し、沖縄の恵まれた太陽エネルギーを活用して、牧草の普及による肉牛の増殖、野菜類、果樹、熱帯花卉等の振興を図って各地域の特性に適応した農業構造の改善を図ることが必要であります。

 漁業については、国は財政支出および投融資の遅れを速やかに補完するとともに、本土から分離させられたことにより生じた漁業権や船数、漁獲量の枠などについても特別の措置を講じなければなりません。


 そこで、漁港の整備を重点に置くとともに協業化による漁船の大型化、設備の近代化を図り、亜熱帯の立地を生かしてウナギ、クルマエビ、ヒトエ草等の沿岸栽培漁業を幅広く普及する必要があります。

 次に第3次産業の柱である観光産業については、沖縄は自然景観に恵まれている関係から、将来、相当の来客数があるものと推測されるので、自然の保全に留意した観光道路、観光施設、宿泊施設等の開発を図らなければなりません。

 以上の社会開発、経済開発を図るためには、水資源、電力の開発を先行させることが肝要でありますが、これには莫大な財政措置が講じられなければなりません。

 一方、沖縄の開発を計画的に推進するためには、軍用地解放後の跡地利用を含む土地利用計画の策定とこれを実施するための国の思い切った助成措置が必要であります。

 さらに、地域開発に欠くことの」できない軌道を含む交通機関の抜本的対策が速やかに検討されなければなりません。

 新生沖縄県の開発は、以上述べたように、軍事基地の撤去を基本条件とし、住民福祉の向上および地方自治の尊重を最重要課題として推進されなければならないのであります。



posted by ゆがふ沖縄 at 00:02| 琉球政府の復帰施策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月29日

琉球政府の復帰施策(17)

琉球政府の復帰施策(17)

■幻の「屋良建議書」(10)

〜沖縄復帰の建議書〜

1971年11月18日

 (4)最後に、この法律案の最大の問題点は第6条の政令への委任事項であります。この規定は、「この法律を定めるもののほか、防衛庁関係法律への適用については、当分の間、政令で必要な規定を設けることができる」と定めています。

 沖縄返還協定は、この前文で沖縄の日本復帰が1969年11月の日米共同声明の基礎の上に行われていることを再確認したことに留意して返還を規定する旨述べています。そして、その日米共同声明は、第6項で復帰後は沖縄の直接防衛の責務を日本が徐々に肩代わりしていくということと、沖縄の米軍基地の保持に合意することを述べています。
20081023SG10145.jpg

 この共同声明での約束を受けて、今回の返還協定締結後まもなく、「沖縄の局地防衛責任の日本国による引き受けに関する取極め」が締結されています。この取極めで沖縄への自衛隊配備の具体的計画が定められているのであります。


 これらの自衛隊配備や米軍基地の保持、機能強化の約束を果たすために事柄が、要するにここでいう「防衛庁関係法律の沖縄への適用について・・・沖縄の復帰に伴う必要とされる事項」に入れるものと見られるのであります。

  
 これらについては、自衛隊法その他防衛庁関係法律の沖縄への適用に政令で適宜変更を加えることが予定されているわけであります。そうでなくてさえ、憲法違反といわれる自衛隊法をはじめとする防衛庁関係法律が沖縄への適用に関するかぎり国会審議にもかけられることなく政令で定めることを認めようということであります。


 しかも、政令による措置の方向は、すでに前期の日米共同声明路線に沿うものとなるであろうことは、容易に推測できることであります。

琉球政府は、このような措置を容認することはできません。


(三)沖縄開発と開発三法案について

1 沖縄開発の基本的理念


 従来ややともすると、所得水準の向上のみを目的とした経済開発がなされてきたのでありますが、沖縄開発に当たっては、人間尊重ないし人間回復の精神を、この基底に置くものでなければなりません。

 本土においては、大企業中心の高度成長政策が推進されるにつれて、過密・過疎化、都市問題、公害問題などの進行、激化を見るに至り、従来の開発の在り方に対し、再検討をせまられております。

 沖縄開発に当たっては、このような本土の轍を踏むことなく、あくまで人間主体の開発でなければなりません。

 沖縄開発の第二の理念は、自治権尊重の立場に立った開発でなければなりません。沖縄県民は異民族の支配下にあって、苦難な道を余儀なくされながらも民主的諸権利を勝ち取り、常に自治の確立を希求してきました。幾多の苦難の中で、県民が獲得し学んできた尊い体験は、復帰後においても無にすることなく、地域の独自性、多様性を豊かに開花させるために、役立てられなければなりません。

 沖縄開発の第三の理念は、平和で豊かな県づくりを志向するものでなければなりません。


 沖縄の軍事基地は、質量ともに本土におけるそれをはるかにしのいでおり、そのため沖縄の経済社会に異常な影響を与え、第3次産業肥大化に見られるような産業構造の畸形化を招くとともに他方、基地の持つ非人間的、頽廃的性格が幾多の社会的問題を惹起しております。


 また、基地の存在は、総合的統一的土地利用計画にとって大きな障害となっており、琉球政府の主体的開発計画の策定を阻害してきております。したがって、基地の撤去を前提としない限り、真の意味で恒久的な開発計画の策定は不可能であり、自由かつ平和な社会の建設などは到底望めません。


写真
 1969年11月 佐藤・ニクソン共同声明発表。
 1972年の沖縄返還が決まる。












posted by ゆがふ沖縄 at 00:05| 琉球政府の復帰施策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月27日

琉球政府の復帰施策(16)

琉球政府の復帰施策(16)

■幻の「屋良建議書」(9)

〜沖縄復帰の建議書〜

1971年11月18日


(2)次に、講和前損害の補償漏れに対する見舞金の支給を定めた第3条と、これに関連する事務の所掌や権限について防衛庁設置法の一部に必要な改正を加えた第7条についてであります。
琉球政府行政主席・屋良朝苗氏.jpg

 戦後26年にわたるアメリカ軍事支配のもとに沖縄県民がこうむった損害は、広範囲、多岐かつ甚大なものであります。琉球政府はこれらの損害について憲法上の国民の請求権として国に補償要求を訴え続けてきました。この法律の第3条に規定された講和前損害の補償漏れの問題も琉球政府の要求してきた項目であり、これに対する見舞金の支給が定められていること自体は、それだけについて言えば、一応是とされなければならないものであります。


 しかしながら、この補償漏れの問題は、請求権問題のごく一部にすぎません。請求権問題については、別に「沖縄の復帰に伴う沖縄県民の対米請求権処理の特別措置法等に関する法律」(仮称)の立法要請の中で、琉球政府の立場を一括して詳述することといたします。

 要するに、請求権問題は、復帰に伴う沖縄側の最重要な要請の一つであります。多岐にわたる請求権項目の中から、その一部にすぎない講和前の補償漏れだけ、それも物的損害を除外して、人身損害だけについて規定することは到底容認できないことであります。しかし、右の措置では、これを「見舞金の交付」として規定していますが、琉球政府は、憲法上の国民の権利として要請をしているのでありますので、到底是認できるものではありません。


 さらにこの措置で最も重大な問題は、これが防衛庁関係法との関連で定められている点であります。琉球政府としては、この事項は基本的には戦後処理の一環であると考えております。したがって、この問題は、沖縄の復帰に伴う特別措置法または単独の特別立法によって措置すべきものだと考えます。しかるに、この問題を防衛庁関係法で措置していることは、あえて問題の本質をそらすものであります。したがって、このような日本政府の態度を容認することは到底できないところであり、琉球政府としては強く不満の意を表明するものであります。

(3)次に、軍関係離職者等臨時措置法(沖縄立法)第2条に規定する軍関係離職者のうち、同条第1号にかかる者を、本土の駐留軍関係離職者等臨時措置法第2条第1号にかかる駐留軍関係離職者であるものとみなして特別給付金の支給に関する同法第15条から第17条までの規定を適用することを定めている法案第5条についてであります。

 これも、前項と同様に、沖縄に巨大な米軍基地が存在し、多数の軍雇用者が存在するという現実認識を前提とする限り、その離職者を救済するための措置は必要としなければならないのであり、その限りではこの措置はむしろ当然であります。
■講和前補償委員会報告書にサインするキャラウェイ弁務官.jpg

 しかし、ここで指摘しなければならないことは、右の駐留軍関係離職者等臨時措置法が性質上、労働関係の法規として分類されるべきであり、したがって、むしろ沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律案の中で取り扱われるべきものであるにもかかわらず、ことさらにこの法案に取り入れられている点であります。


 これについて琉球政府としては、講和前補償漏れに関する第3条の措置について述べたと同様の立場を表明するものであります。この措置は、すべからく沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律案のなかに取り入れられるべきであります。

写真:講和前補償委員会報告書にサインする

   キャラウェイ高等弁務官

   19621016日(琉球列島米国民政府)





posted by ゆがふ沖縄 at 00:02| 琉球政府の復帰施策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。