2012年08月26日

琉球政府の復帰施策(15)

琉球政府の復帰施策(15)

■幻の「屋良建議書」(8)

〜沖縄復帰の建議書〜

1971年11月18日


 第二点は、この法律は施行と同時に米軍や自衛隊等に使用権を生じしめ、所有者に対しては単に遅滞なく使用する土地の区域等の通知をしさえすればよいという手続き面の問題であります。国や公共団体等が他人の権利や財産に強制的に制限を加える場合には、その必要性が認められたとしても、「正当な手続き」を経なければならないことは民主主義の原則であり、最小限度の要請であります。
琉球政府行政主席・屋良朝苗氏.jpg

 しかるに、この法案では強制使用の対象物の特定も明確になされず、単に「土地の区域」という漠然とした事項の通知しか義務付けられていません。講和発効後米軍に基地使用を認めたときは、「使用しようとする土地等の住所、種類、数量及び試用期間」を通知すべきこととされ、土地収用法でも「「土地の細目(土地の所在、地番及び地目)」の公告をしなければならないことになっていることに対比してみた場合、これは正当な手続きを回避し、権利者の利益を害するものであるといわざるを得ません。

 第三点は、使用者の原状回復義務に関する現状とは、いつの状態を指すのか不明確な点であります。この法案によると、土地等を使用することができなくなった場合、使用者は「土地又は工作物を現状に回復し、又は現状に回復しないことによって生ずる損失を補償しなければならない。」と規定しているが、この原状回復義務は、米軍が当該土地等を使用した時なのか、この法案により取得した時点なのか明らかになされておりません。後者だとした場合、この原状回復義務に関する規定は、ほとんど無意味になってしまい、権利者は計り知れない損失を蒙ることになります。


 このように主要な問題点のみを指摘した限りにおいても、この法案が、いかに県民要求とも、憲法原理とも相容れない不法、不当なものであるかが明らかにされたことと考えます。

 かつて、米軍は講和発効後の軍用地使用の法的根拠をつくりだすために、県民の意思を無視し、一方的に布令、布告を発布して形式的のみを整えてきましたが、この法案の態度は、かつての米軍のやり方と何ら異なるところはないといわれてもいたしかたないであります。


 以上の点から琉球政府としては、この法案の制定に反対し、本土政府の再考を要請するものであります。

1.     沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律の問題について

「沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律」(案)についても、容認することのできない幾つかの重要な問題点を含んでいます。

航空自衛隊那覇基地1.jpg

(1)琉球政府は、一切の軍事基地に反対する立場に立って、従前から一貫して基地の整理、縮小、撤去を求めてきました。これに対して、日本政府も基地は漸次縮小していきたいと言明してきました。仮に、日本政府に沖縄の基地を整理、縮小し、いずれは完全撤去しようとする意思があるとすれば、行政組織についても、その点の配慮が必要であります。


 このような見地から現在の米軍基地維持と自衛隊の配備を前提とする那覇防衛施設局の設置には、にわかに賛成するわけにはいきません。また、那覇防衛施設局の設置と関連して、この法律の第2条では、現在の琉球政府職員で復帰の際に防衛庁の職員となる者があることを想定し、これに対する防衛庁職員給与法の適用に関する特別措置を規定しています。

 しかしながら琉球政府職員は防衛施設局への身分引継ぎに強く反発しています。したがって琉球政府は職員の意に反してその身分を防衛施設局に引き継ぐような措置を講ずることはできません。

写真:自衛隊那覇基地







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2012年08月25日

琉球政府の復帰施策(14)

琉球政府の復帰施策(14)

■幻の「屋良建議書」(7)

〜沖縄復帰の建議書〜

1971年11月18日
琉球政府行政主席・屋良朝苗氏.jpg


(3)この法律の本質的問題点は、米軍基地の存続と自衛隊の配備であると考えますが、その他にも憲法や土地収用法など、現行法体系との関係において重大な問題を内包しております。

 その第1点は、暫定使用という名のもとに5年もの長期にわたって、土地所有者の意思如何にかかわらず、強制的に米軍や自衛隊に土地等の強制使用を認めていることであります。

 私有に属する土地を正当な手続きを得ずして5年の長期にわたり、一方的かつ強制的に使用することは、実質的に土地等の強制収容であり、如何なる理由を付したにせよ私権に対する重大な侵害であって、財産権の保障を規定している憲法だい29条に違反するものといわねばなりません。

 法律上暫定使用するのは、使用の根拠となる法体系に変動がある場合に、新たな法体系による根拠を合法的に設定するまでの間に生ずる不可避的な空白期間を一時的に埋め合わせる場合であるはずです。

 講和発効の際の本土の米軍基地に関するこの暫定使用期間は6ヵ月であります。しかるに沖縄の土地等については、5年の長期にわたり、正当な法律上の手続きも取らず、一方的に強制使用することは、沖縄県民に対して差別を強いるものであり、法の下の平等を規定した憲法第14条にも違反するものであります。

 私有に属する土地等について、強制使用、使用等が許されるのは、憲法第29条に規定する公共の用に供する場合のみであり、公共の用に供する事業が何であるかは、土地収用法に規定されております。

 航空自衛隊那覇基地2.jpg

 ところが、自衛隊の配備は憲法第29条でいう公共の用に供する場合と、土地収用法で規定する公共の利益となる事業には該当しません。したがって自衛隊の配備のために土地等を強制使用することは、その点でも憲法第29条に違反し、また土地収用法の趣旨にも反するものであります。


 自衛隊は現在、沖縄の土地等を使用しているのではありません。復帰によって法体系が変わるからと言って暫定措置を講ずる余地はありません。したがって、法的に暫定措置使用を認める根拠は全くないはずであります。

 現行法上、自衛隊が強制的に他人の土地を使用できるのは、防衛出動という緊急の場合だけであります。暫定使用の法的根拠がないにも関わらず、あえてこれを認めようとすることは、現行法体系上不可能なことを暫定使用の名の下に可能ならしめる。つまり、強制的に自衛隊の配備のために土地を使用しようとするのがこの法律の意図だと思われるのであります。

 このことは、自衛隊配備のための特別措置であり、県民の意思を無視した違法な措置といわなければなりません。そして5年間の暫定使用を既得権とし、これを足場にして、さらに長期間にわたる強制使用、収容等を意図しているのではないかとの危惧も払拭しえないところであります。

写真:航空自衛隊・那覇基地 
復帰後、沖縄には40施設の自衛隊基地が配備された。
沖縄の自衛官数は2012年4月現在6580人。




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2012年08月24日

琉球政府の復帰施策(13)

琉球政府の復帰施策(13)


■幻の「屋良建議書」(6)
〜沖縄復帰の建議書〜
1971年11月18日

 そればかりでなく、いわゆる「基地公害」や米軍人軍属の犯罪、基地あるが故に発生する人権侵害の問題はさらに深刻であります。

 空からトレーラーが落下したり、ジェット機が墜落したり、基地から流れ出た廃油によって井戸水が汚染されたいわゆる「燃える井戸」、米軍の演習等による流弾事故、米軍人軍属による頻発する交通事故による人身傷害、婦女子殺傷、暴行されたり、また、原子力潜水艦による放射能汚染、ミサイル発射演習による漁業への影響等々、その数は枚挙にいとまがありません。


 したがって沖縄県民は、県民の人権を侵害し、生活を破壊するいわば悪の根源ともいうべき基地に対して強く反対し、その撤去を要求し続け、本土に復帰することによってこれまで県民の蒙った米軍基地によるあらゆる被害は解消されるものと期待し、それを要求してきました。仮に直ちにこの県民の要求が全面的にかなえられないにしても、基地の態様が変わって県民の不安を大幅に軽減することを強く求めてきました。

 しかるに、この県民の当然の要求が、このたびの沖縄返還協定やこれを基本にして講じられるようとしている国内措置において実現されていないことに対し、強い不満の意を表明するものであります。

 一方、本土政府は、沖縄への自衛隊配備を具体的に進めているようであるが、米軍基地の存在に加えて、自衛隊が配備されることは沖縄基地の強化を図ることにほかなりません。また、米軍基地の肩代わりに自衛隊が配備されるとなれば、自衛隊の沖縄配備は海外諸国を刺激し、沖縄基地にまつわる不安は増大こそすれ軽減することはないでしょう。

 さらに、県民はかつての戦争体験、戦後の米軍支配の中から、戦争につながる一切のものを否定しております。したがって、ここに改めて自衛隊の沖縄配備に対し反対の意思を表明いたします。

 そこで、この沖縄基地と自衛隊配備問題に関連する「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律案」「沖縄の復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置に関する法律案」の両法案について以下問題点を指摘します。

1.     沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律案の問題点

(1)この法案は、沖縄における米軍基地の存続を前提とし、その確保を図ることを目的としています。この法案には、基地を無くすとか、あるいは縮小していくという方向を示すものを見出すことができません。
キャンプ・シュワブ.JPG

 沖縄に存する米軍基地は、米軍が占領軍としての権力と、絶対的、排他的な「施政権」によって、民主主義の原理に違反して、県民の意思を抑圧ないし無視して構築、形成されてきたものであります。そして、その基地の存在が県民の人権を侵略し、生活を圧迫し、平和を脅かし、経済の発展を阻害していることは、さきにも指摘したとおりであります。

 平和を希求している沖縄県民は、軍事基地に反対しその撤去を求めているのであります。したがって軍事基地の維持、強化を図ることを目的とするこの法案には基本的に反対せざるを得ません。

(2)この法案は、米軍基地の維持、存続に加えて、新たに自衛隊の配備を予定し、これを可能ならしめようとすることが目的となっています。


 沖縄県民は米軍基地だけでなく、自衛隊の配備にも反対であります。自衛のための戦争といい、聖戦といわれたあの第二次世界大戦末期の沖縄戦において、沖縄県民は戦争の残酷さと悲惨さを、身をもって体験し、戦後26年に及ぶ米軍支配の苦しい生活体験によっても、軍隊というものの持つ本質的性格をいやがうえにも知らされました。

 十数万の尊い生命を犠牲にした戦争体験と26年の長期に及ぶ米軍支配下の生活体験を経た沖縄県民にとって、自衛隊の配備を許すことはできないのであります。

 沖縄県民は、沖縄から一切の軍事基地を撤去して、沖縄を平和のメッカとすることを希求しているのであります。



posted by ゆがふ沖縄 at 00:23| 琉球政府の復帰施策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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